濱野裕生

金木犀 – 濱野裕生

いつになく冷えた朝 窓の外は深い秋
雪のように舞い落ちる金木犀 白い季節はすぐ‥そこ
静かな寝息立て 今朝は母がまだ眠ってる
昨日、届いたばかりのハーモニカ 枕のそばに置いたまま
窓を少し開けましょうか? 母の眠りを邪魔せぬように
そして香り放てよ金木犀 今朝は君が母を起こせ

カーテン越しに朝日が射します 窓の外は深い秋
庭の隅に積もった金木犀 白い季節はすぐ・そこ
風が部屋を訪ねます 母に季節を届けます
やがて母が静かに眼を覚す まるで幼子のように
お茶でも飲みましょうか? 耳元で母に尋ねましょう
そして香り放てよ金木犀 君が窓辺に母を・呼べ

今は秋? 母が聞く 春はまだ? 母が聞く‥
途切れ途切れの記憶の中に 忘れられない事がある
古びたアルバム 開く度に 破れた写真 継ぎ足す度に
母の記憶が つかの間・戻る

92度目の冬が来る 辛い事など一つもなかった
愉しい事だけ覚えているさ 私にいつも‥言う
母が昨夜の夢を話します 幼い頃は近所のミッチャンと
川に水汲み山には小さなビャラ集め みつえサンも同じ夢をみたかも
会いに行きましょうよ 貴方を慕うみつえサンに
そして、姉のふじえサンにも会えるかも 歌が浦は‥母のふるさと

花言葉は「気高い人」 母には似合うかしら?
香り届けよ思い伝えよ金木犀 母には「素朴さ」が似合う
日毎夜毎に匂い立ち 日毎夜毎に舞い落ちる
やがて命短かし金木犀 希望を母に与えて・くれ
厚めの布団に替えましょうか それとも薄手を重ねましょうか
部屋に飾り続けた金木犀 今日で君とは・お別れ

今は秋? 母が聞く 春はまだ? 母が聞く‥
途切れ途切れの記憶の中に 忘れられない事がある
古びたアルバム 開く度に 破れた写真 継ぎ足す度に
母の記憶が つかの間・戻る

いつになく冷えた朝 窓の外は深い秋
秋の終わりを告げて散る金木犀 白い季節はすぐ‥そこ

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