濱野裕生

施設にて – 濱野裕生

窓越しに見える夕焼け空 施設の外は車の波
遅かったじゃないか 何してんだと 私を激しく叱る
買物に行くよ これから直ぐにさ お前と一緒にさ
何も分からない今が分からない 施設を自分の家と思ってる
ベッドを揺らし立とうとする そして私に倒れ込む
施設の壁のチャイムが響く ここはどこ?‥母がつぶやく
どうしたんだろう私は何故ここに居る 歩けないのは何故なんだと
首を傾げてる 私に聞く 深いため息をつく
窓の外‥夕陽が動く 私の心も揺れている
苦しいもんだよ毎日がさ お前にそれが分かるかい
そして言ういつまで生きるのかしらって 私は目を伏せる
もういいよね そろそろ・かしら ポツリと母が言う

気紛れな梅雨空は 突然、涙を流したり
真っ赤な顔で怒ってみたり 母の記憶を曇らせたり
WOO‥私は憎む WOO HOO‥時の流れを WOO HOO WOO HOO

覚えてるかい ほら・いつもの散歩道 あんたと俺をいつも待ってる
足を引きずる 年老いた犬 今日も居るかしら
負けちゃいけないよ あの犬だってさ 必死に生きてるじゃないか
悔やんじゃ駄目さ 嘆いちゃいけないよ あんたは立派に闘っているよ
今は兎も角 歩けるようにさ そして家に戻る事さ
頑張ってくれよ せめて退所まではと 私は母を励ます
帰りなさい・もう、遅くなる お前は仕事で疲れただろうと
明日もおいでよ 待ってるからねと 母が母に戻りだす
送っていくよ せめて玄関まではと 母が急に騒ぎ出す

気紛れな梅雨空は 突然、涙を流したり
真っ赤な顔で怒ってみたり 母の記憶を曇らせたり
WOO‥私は憎む WOO HOO‥時の流れを WOO HOO WOO HOO

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ひととき – 濱野裕生

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