濱野裕生

綿雪 – 濱野裕生

ホラ・綿雪が踊りだしたよ 青く澄んだ空から
デイへの途中のいつもの交差点 貴女は空を指差す‥
「雪を掴んでみようかしら・ちょっと窓を開けておくれ」と
まるで子供のように貴女はハシャギ出す 窓に顔を 擦りつけてる
ホラ・ご覧よあのビルの角 身体寄せ合う鳥が居る
3羽の鳩が寒さに首を縮めてる きっと・家族だよね
もう・何度目の冬を過ごしたかしら 貴女は・目を伏せる
そして・「こんなに晴れた冬の日なんて久し振りだよ」・私に・ 言う
母が両手を出す 綿雪が舞う中に
やがて・雪が溶けてゆく 母の手のひらに
まるで・雪は自分の命を 母に与えるように
ホラ・綿雪が踊っているよ 貴女を励ますように
そして無口な冬はなにも応えない 母は今日も施設へ向かう

去年までなら ずっと見とれていた 施設の二羽の紅鶯宿
今年の貴女は振り向きもしない 小振りの梅の事‥
ホラ・綿雪が蕾の頭に乗ったよ 冷たさにクシャミをするかも‥
でも・雪は消えたよ直ぐに 姿を消したよ これが命の儚さだってネ
こんなに晴れ渡る青空なのに 雪はどこから降るんだろうネ・って
そんなに急ぐ旅でもないはずなのに 母は何でも知りたがる
そして、ホラ・春はすぐそこなのに いつも貴女は急ぎ足
冬よ母にもっと言葉を語り掛けてよ だけど無口な冬は何も応えない
母が両手を出す 綿雪が舞う中に
やがて・雪が溶けていく 母の手の平に
まるで・雪は自分の命を 母に与えるように
そして、ホラ・春はすぐそこなのに いつも貴女は急ぎ足
冬よ母にもっと言葉を語り掛けてよ だけど無口な冬は何も応えない

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