甲斐田晴

水の記憶 – 甲斐田晴

水面に映る思い出が
静かに笑うように弾けた
いつしか僕ら躊躇いを覚えて
恥じらう心と他人を知った

眠る空に浮かぶ星を
君は何かに例えては
忘れないように名前をつけて
戯けたように笑っていた

浮かんでは消える言葉の花束 歌声すら今は彼方
揺蕩う心を漣が運ぶ

「君の声が、聞こえた。」

いつかはきっと思い出す
名前を失ったあの時間も
水の底でいつか会えたなら
君はどんな名前で 僕を呼ぶだろう
僕はどんな言葉で 君を描くだろう

巡る記憶の海原に
眠る過ぎた日の記憶が
光を放ち輝いている
忘れたはずの思い出よ

うらぶれた僕の心のささくれ
伝えられないままの言葉
記憶はいつしか形が変わっても
思いはあの日のまま

心変わりは水のように
君が忘れてしまったこと
僕がずっと覚えているよ
だから君は振り向かないで

いつかはきっと思い出す
名前を失ったあの時間も
水の底でいつか会えたなら

消えない思い出が僕にはある
年甲斐もなくただ重ねてゆけ
加速する鼓動が止まるまで

僕はずっとこのまま夢を見るだろう
君をずっとこのまま夢に見るだろう

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