川村結花

冬が来た – 川村結花

地下鉄の階段上ったら
午後4時半 もう陽が落ちてた
交差点ぎわ 信号機が
ぼんやりかすんで立ってた
自動販売機の缶コーヒー
いつのまにか あったかくなってた
去年と同じ あの匂いがした

冬が来た 冬がまた

右手が冷たかった
どうしようもなく なりそうになったから
心踊る想い出を
何か思いだそうとしたけど
こま切れの そんな記憶を
手のひらに つなぎ合わせてみても
1日分にもならなくて

5年先も10年先にも
あいかわらず こんなふうに
何かの途中かと思うと
泣きたくなった

どこにゆけば 終わりなんだろう
どこに着けば 幸せといえるのだろう

そうあの日も風が吹いてた
あんなにやりたかった逆上がり
出来たとたん
鉄棒がひどく つまらなく思えた
逆さまにぶら下がった時
見つけたくすんだ空 それが
ほんとに 欲しいものだとわかった

どこまでゆけば 終わりなんだろう
どこに着けば 幸せなんだろう
いつまで待てば いくつになれば
すべて見えるだろう
耳の奥 ささやく声がする
ひとりだよ ひとりだよ ひとりだよ
どこまでも こんなにも 誰といても

冬が来た 冬がまた
冬が来た 冬がまた 冬が来た

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