(天(そら)を渓(たに)を断崖(がけ)を海を巡り
生きとし生ける者を守護る精霊たちの翼の
その唄笛は今も響いている)
雨粒を紗(うつ)す 灰色の雲間
霞む足跡を ひとつ残して
虹の裾を曳き 色を変えながら
天の高殿 風は渡りゆく
痩せた岩間を 這う草に宿れる
幽かな鼓動の 目醒め 誘(いざな)える
春に 光ありて
花の吐息 露の雫
夏よ 生命謳え
水の踊り 木々のざわめき
秋に 実を結ぶ
秋に地に 実を結ぶ
豊穣の 祭りの唄
豊穣を願う 祭りの唄
やがて 重なり行く
やがて 巡る
季節を 抱きしめ
冬の使者を招ぶ 灰色の雲間
風は 荒野(あらの)の
薄氷(うすらい)を 渡る
(窓越しにさす細い風が
ひそやかに眠る 記憶の欠片を紗し出す
それは透明に耀く 古い永い祈りの軌跡)
高く 渓を抜けて
雫散らす 川の流れ
天に 羽を広げ
虹を渡る 光の軌跡
疾れ 風の音よ
疾れこの 風の音よ
祝福の 唄を奏で
祝福の楽と 唄を奏で
永久(とわ)に 綴り行く
永久にこの 終わりのない
物語 続くように
旅路が 続くように
あまねく世界に 刻印(きざ)まれた
ヒトたちの知らぬ その標(しるべ)は
精霊の指が 綴りし文字
永久に 果てぬ祈り
黒き奇岩(いわ)の面(おもて)に
白き砂の翳(かげ)
凍る湖水(みずうみ)の鏡に
寄せる 海波(わだつみ)の手に
老(ふる)き大樹の幹に
細き 草の蔓(つるべ)に
そらに描かれた 祝福
土に記した 精霊の残せし 軌跡
(天と地をつなぐ風の精霊の
祝福の永久に絶えんことを)
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