ナツノムジナ

報せ – ナツノムジナ

雨 濡れないままの夢 窓から 舞い落ちて
今日の 夜に捨てた羽 君のもの 鱗粉は 青く

空 切れ切れにこぼれた 飛べなくなった 余白
きっと ただのイメージ 昔に墜ちた 紙飛行機

手を 伸ばす前に消えた 好きな色 滲む余計な 記憶
そっと 離れてみれば 脆くて 柔らかい 月

そうさ 赤白黄色 ただ鱗粉が 舞って
ずっと ただの幻だから 今落ちていく 涙さえ

明日 君の休みが 取れたみたいで 良かった

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台風 – ナツノムジナ

明け方 20号の予報に 湧く子供らと電話線を 走る喜びも 渦を巻き溶けてゆくああ 窓に変わる 私の胸を 打ち付ける風ずっと 変わらない景色 季節の影で 巡りゆく

金星 – ナツノムジナ

呑み込んだインクの黒は夜に似ていて あなたのそば 星になれたら月面に降りる度に眺めた光 あなたの目に似ていた同じ夜 生まれたばかりの 孤独を 照らす明星編み終え

漸近線 – ナツノムジナ

通り雨の気まぐれが 君の髪を濡らす放課後の窓辺には ぬるい風が吹いた夕暮れ 街は よそよそしく集う 影に シミを落とすあなたの言葉と 僕の沈黙は同じ意味を持つか

優しい怪物 – ナツノムジナ

目に見えることが 全てじゃないと 涙は流れず 瞳は虚しい信じたものが 手渡される度に 一人になれたら どんなにいいと思う晴れた日の朝に 私は歳をとって 生まれて

タイトロープ – ナツノムジナ

蜘蛛のように 巣を作るのは何故 透明な糸の中に 吐き出していく想いよ君の声が 光に変わる度に 掠れた糸の先で 震えを隠す夕凪足を滑らす 宙吊りのまま 次第に 目

煙の花束 – ナツノムジナ

煙の花束を 抱きしめ 肌を 震わせながら連なる光の 瞬き いつでも ここに帰る 暗がり寝ぼけた朝日が 僕を連れて別れもないまま 走り出して謎めいた奇跡の 切れ間

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