ナツノムジナ

タイトロープ – ナツノムジナ

蜘蛛のように 巣を作るのは何故 透明な糸の中に 吐き出していく想いよ
君の声が 光に変わる度に 掠れた糸の先で 震えを隠す夕凪

足を滑らす 宙吊りのまま 次第に 目が眩むほど 透きとおる日々に

合図を待つよ ひと続きの独白を
飽きるまで繰り返す 嘘になっても構わない
意味を超えて 織りなす夢あべこべに
欲しがるのはいつも お話の始まりだけ

全ての夜に 確かめた跡 次第に 消えてゆくもの 巻き戻してみる

蜘蛛は逆さまの街に 目覚めて息を吸い込む
糸を巻きいつかの 幻だけを吐き出し

差し込む日差しすらも 変わらないものに変わり
決して落ちない姿 降る物語を 繋ぎ止めて

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台風 – ナツノムジナ

明け方 20号の予報に 湧く子供らと電話線を 走る喜びも 渦を巻き溶けてゆくああ 窓に変わる 私の胸を 打ち付ける風ずっと 変わらない景色 季節の影で 巡りゆく

金星 – ナツノムジナ

呑み込んだインクの黒は夜に似ていて あなたのそば 星になれたら月面に降りる度に眺めた光 あなたの目に似ていた同じ夜 生まれたばかりの 孤独を 照らす明星編み終え

漸近線 – ナツノムジナ

通り雨の気まぐれが 君の髪を濡らす放課後の窓辺には ぬるい風が吹いた夕暮れ 街は よそよそしく集う 影に シミを落とすあなたの言葉と 僕の沈黙は同じ意味を持つか

優しい怪物 – ナツノムジナ

目に見えることが 全てじゃないと 涙は流れず 瞳は虚しい信じたものが 手渡される度に 一人になれたら どんなにいいと思う晴れた日の朝に 私は歳をとって 生まれて

煙の花束 – ナツノムジナ

煙の花束を 抱きしめ 肌を 震わせながら連なる光の 瞬き いつでも ここに帰る 暗がり寝ぼけた朝日が 僕を連れて別れもないまま 走り出して謎めいた奇跡の 切れ間

報せ – ナツノムジナ

雨 濡れないままの夢 窓から 舞い落ちて今日の 夜に捨てた羽 君のもの 鱗粉は 青く空 切れ切れにこぼれた 飛べなくなった 余白きっと ただのイメージ 昔に墜ち

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