のの

フィラメントにキスをして – のの

流れるまま 悲哀ばかり
運びゆく 舟人
恥ずかしがり屋の夜月の
明かりは痛いだけ

生きるための物語を
読むための灯りは
いくつかの豆電球
草臥れた古株

フィラメントにキスをして
それだけが魔法さ
その灯りが僕たちの歌
傷ついたとき 優しいまま

僕たちが幾つになってもまた
くるおしく くるおしく
この歌に恋しよう

足跡がわりの波紋は
誰かの気に触れる
感情に込めたひずみは
誰かの愛とぶつかる

フィラメントにキスをして
灯りのために熱く
積み上げた悲哀をぬけて
やってくる怒りにも向けて

殴るなら鮮やかに打たれて
あくる日も あくる日も
この歌に恋しよう
美しく形を変えてよ
僕たちと一緒に
揺らいでよ 揺らいでよ
瞬きのたびに

この胸が抉れるほどの
詩情を知っても
消さないで 消さないで
キスで点けた灯を
僕たちが幾つになっても
どんなときも
くるおしく くるおしく
この歌に恋しよう

流れるまま なおも強く
生きることを選ぶよ
いくつかの豆電球
優しく灯す歌

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