のの

ひこう船 – のの

こんなところまで
溝を埋めなくていい
薄霧は迫る
容赦もないね
押し黙った夜のこと

触れないけど
愛しているんだよ
だからもう出ていって
くれていい

時計の針の音さえ
耳に障る
まだ君の残り香を
撫でてる
攫われた熱を
もう忘れてしまえば

白けた朝を
迎えたときから
僕は飛行船
遥か彼方の
空の高さを
知ったようで

堕ちゆく手筈
空な雲間で
ただそっと君の影を
抱き寄せる

試みの果てに
かえって強くなる
ただ僕を裏切らない光
攫われた熱は
もう此処にないけど
薫る風を
待ち続けて
生きていたい

新しい記憶が
日々に刻まれるたび
掠れていなくなって
しまわないで

こんなところまで
溝を埋めなくていい
薄霧がやがて
晴れたあとでも
特別なものがあれば

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