とうめいのくに
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まぼろしいろ – とうめいのくに
あなたが纏う色は今日に相応しくただ飾らない脚が空を切る靴は凛と鳴っている 私はやがて気付くように歩き出すただ木漏れ日の陰のほうを歩く取り澄ます態度で 埋まらない距離を切り捨てる単位でこの道は遠く続いていく薄情なようにも あなたが歩く今日の彩度は、私風情に見合わない笑う顔は如何様に取ればいい、分からないよ恋のせいと免れたい、謂れなどないのにやがて遠くなる彩り狡いままで、まだ居させて 春めく風に十色ぶ…
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愛情文庫 – とうめいのくに
――たとえば、もし世界が滅びて地球にふたりだけになって――あるいは、わたしが年老いあなたの名前を忘れてしまったなら…… そんな時がいつか来てもずっと、ずっと愛してほしい さぁ、あなたが愛した小説のヒロインになったら『セカイ』か『わたし』二者択一よ天秤に掛けられても選んでね ねぇ、文字化けしそうな毎日もあなたと綴るよ活字だらけのこの日常からあなたひとつだけの〈愛〉を見つけてね 絵画や映画よりも、きれ…
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春を待っている – とうめいのくに
嵐の前の日 闇夜に迷って静かに迎える 朝を待っている 消えゆく月とか 枯れてく花靄夢でも見ながら 春を待っている 眠らせて 夜の向こうへひらり 素敵に欠伸をしよう溶けた雪 濡れた靴紐まだ白い息から君を覗いた 座礁して 黒い海呑み込む 魔法を虚ろに 唱えた波間に 消えゆく私と季節は夢と知ってる? 漂って 肺が朽ちるまで無事に帰れたら 合図を送ろう書き掛けの本も渡せないまだあの日浮かんだ 君を待ってい…
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アストロノート – とうめいのくに
壊れたまま眠ってた色褪せた望遠鏡もう一度 声が聴きたくて祈るように 夜空を見上げた その心が 愛した人とまた出逢って 笑えますように望遠鏡 覗いた宇宙を夢みた少年 今はゆっくりおやすみ 未来と過去を写した色褪せた望遠鏡ある筈ない 言葉を探した逃げるように その手を離した 白い髪も 弱った目も細い指も 痛む脚も脱ぎ捨てたら 光る蝶になって自由な宇宙(そら)へ 羽ばたいて その心が 愛した人の待つ星(…
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コンパス – とうめいのくに
ねぇ 消えていかないで 少し掠れた君の面影夜が長すぎて どうしたらいいのいつか君を忘れたら 私は空に何を歌うの眠れない夜はこうして君を想いたい 飾らない日々と外見と詰め込んだままのダンボール余った愛と空白に溺れてしまうようだ 忙しいふりで封をして気づかないように前を見た部屋の匂いが段々と薄くなるようで ねぇ 消えていかないで 少し掠れた君の面影夜が長すぎて どうしたらいいのいつか眠りにつけたら 私…
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テロメアの産声 – とうめいのくに
何もない 何もない僕はカラカラ 音を立てて寝る何もない 何もない僕は今も僕か 汚れたら 汚れた分の用済みは捨てられていく新しい物はなんだって正しいんだろう 一粒が幾つもあってそれが何個目で 僕を司るだろう夢を転がしてく世界は振り出しに戻る まだ まだ ここにいますか君の眼は 誰を見ていますかオーロラが窓を塞いで行くああ 消えそうだ 何もない 何もない僕はペタペタ 音を立て歩く何もない 何もない僕は…
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グッバイエヴリワンと恋人 – とうめいのくに
波浪(ハロウ)僕は君の心の周回軌道上へと墜落したから春も夏も秋も冬も君との日々を思い出さぬよに 君が転ばないように地球はまだ回り続けている俯いていた僕はそのスピードに振り落とされたけど 手を伸ばした先に君がいて月曜日はまた生きれたありとあらゆるものや人をすべて信じれなくなっても 「ハロウ・ハロウ」君の心の周回軌道上にはまだ遠いけれど僕は君を偲びながら焦がれていたよ諳んじてたんだ 僕が息を止めるたび…
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星屑ワンルーム – とうめいのくに
がらんどうな言葉しか紡げないのは自分に何もないことの証明なのかなまたそうやって日々の事情に戸惑ってるから歩いてきた意味さえも分からないや 錆びついてきた後悔で泣き出しそうだな頭上に映る星たちは煌めくのにそりゃ完璧な理想なんて描けないから死んでしまいたいだとか 情けないな 淡く光ってく線路の先心を塞いでいる 「きっといつか僕らは星屑になって何も信じられなくなる」言いたいことも 言えないままで遠く霞ん…
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flos – とうめいのくに
Daphne, Ficus, Iris, Maackia,Lythrum, Myrica, Sabia, Flos 拝啓僕の願いよ 未来よ 絶え間無たえまない後悔よ体感八度五分の夢は軈て散ってしまった Daphne, Ficus, Iris, Maackia,Lythrum, Myrica, Sabia, Thymus,Ribes, Abelia, Sedum,Felicia, Ochna, Ly…
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僕だけが三月に取り残されている – とうめいのくに
与えた痛みさえ忘れるんだろうこのまま居なくなってしまうの?穏やかな春の風 桜の雨その背は遠くなってしまった、ねぇ 怖いよ 笑わないで机の上に咲いた普通も希望も切り刻んで知らない振りして出て行くんだ辛いよ 壊さないで居場所が欲しいだけさ僕だけが三月に取り残されているみたいだもういいや あの日の言葉さえ思い出せずに優しい人になってしまうの?流れている血と涙 刻んだ秒針心はボロボロになった、ねぇ 怖いよ…