せきぐちゆき

手紙 – せきぐちゆき

桜色の便箋 窓の風にひらりと
飛ばされて 部屋の隅 舞い落ちる

さみしさ耐え続けて やせた文字がこぼれる
あなたとの別れは もう決めてるのに

ああ 最後の一行が上手く書けなくて
ためらう窓の向こう 季節が移ろう

風鈴模様かわいい 封筒選んでみても
詰めるのは ささくれた言葉だけ

都会の夜は どんな夢をあなたに見せるの
これ以上待てないと伝えたいのに

ああ 最後の一行が上手く書けません
飛び回るアゲハは 変わり果てたあなた

ああ ただ一言で済むことでしょう
容易く殴り書きで終わらせたらいいのに

桔梗の花揺れてる 秋の窓を切手に
貼り付けた空はもう 遠すぎて

読み返して まるめて 書き直して 破いて
降り積もる雪はただ 遣る瀬無い

ああ 最後の一行が上手く書けません
終わりの一言が 書き綴れない

ああ 最後の一行が上手く書けなくて
ためらう窓の向こう 季節が移ろう

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第二十六冊十五頁 – せきぐちゆき

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