涙が…涙が流れ落ちた
君の声を覚えていた
『会いたいよ』と
泣いた声が。
通い慣れた畦道を
肩並べ、影
向日葵の花びらが
印を舞い
風をうならす
夕影に鳴く蜩
魔法を解いた
終わりの音
重ねて隠す
下駄の音さえ
鼻緒が切れて
この痛みが
あの夜
満ち欠けた月を
眺めていた
最後まで笑えずに
心を隠した
あの夜
交わした言葉の裏側が
弱さで濡れたまま
心を隠した
優しくしたその倍
優しくされたくて
傷つけた倍
傷ついていた
君の夢を壊しちゃいそうで
この痛みが
あの夜
満ち欠けた月の下
二人は弱くて未完成で
寄り添い隠した
あの夜
さよならと言えたなら君は
楽にでもなれたのかな?
この心も
手紙が積み重ねり
勇気が足りないんだ
君のためだ
君のためだって
君のせいにした
涙が…涙が流れ落ちた
君の声を覚えていた
『会いたいよ』と
泣いた声が
この痛みが
まだ
あの夜
握った君のほろ苦さが
心の化け物を
壊してくれたんだ
寂しくて苦しくて
冷えきった僕の目が
温もりで濡れたのは
君を思い出したからだ
今でもこの場所で
月を眺めていた
後ろから
『馬鹿な人ね』と
泣いた声が…。
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