中村千尋

美容室怖い – 中村千尋

あそこはどうも みんなオシャレで
どんな服着て行けばいいか迷う

あたしはどうも 臆病すぎて
予約の電話さえも勇気がいる

まるで魔界への入り口
あえて壁に生やしたオシャレ蔦が
行く手を阻んでる
ついにドアを開いたら
指名? 何それ選ぶ立場じゃない
試してる?

美容室怖い
見たことないハサミ
生きたまま帰れるのかしら
美容室怖い
「どんな風にしますか?」
思い切って言おう
「石原さとみに…」(笑ってんじゃねぇ!)

見渡すかぎり やはりオシャレで
どんな顔してたらいいのか困る

読みたい雑誌 見つからなくて
Twitter開きつぶやく「助けて」

「まずはシャンプーしましょう」
顔にかけた布がずれる
口の動きで直した
「かゆいところはありますか?」
かゆいところ言える人 存在しない説

美容室怖い
シャンプー終わり「お疲れ様!」
疲れてないのに…
美容室怖い おでこが全開
鏡に映るブサイク誰ですか?

本当は知ってる
誰もあたしを見てないって
わかってる
あたしを恥ずかしがっているのは
いつもあたし

美容室怖い
美意識が高い人が集う ここは戦場
美容室怖い
このあとの予定聞かないで
ただ帰るだけ

「仕上げに巻きます」
煮えたぎる鉄の棒
人思いにやってくれ!!
固く閉じた目を開けると
これあたし?
見違えた 垢抜けたじゃない
美容室そこは
魔界でも戦場でもない
今よりもちょっと 可愛くなれる場所

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