静かな夜のビギン – 織井茂子

君の名はと　たずねし人ありその人の　名も知らず今日砂山に　ただひとり来て浜昼顔に　きいてみる夜霧の街　思い出の橋よすぎた日の　あの夜がただなんとなく　胸にしみじ

黒百合は　恋の花愛する人に　捧げれば二人はいつかは　結びつくあああ　あーー　あああ　あーーこの花　ニシパに　あげようかあたしはニシパが　大好きさ黒百合は　魔物だ

花の都に　憧れて尋ね来た　わたしは小鳥雨に濡れよが　風にたゝかりょが人は　素知らぬふりして　過ぎてゆくあゝ　東京情なし　薄情ものよ尋ね探した　ねぐらさえ陽もさゝ

星もない暗い海見て　しょんぼりとだれをまつやら　今宵もたたずむ黒いコートの　あの女あゝ　青い夜霧に青い夜霧に　灯がにじむ襟あしに横浜(はま)の夜風が　吹いてゆく

酒があたいに惚れたのさふられたあたいに　惚れたのさきらいさ　きらいさ酒なんて大きらいさ夜がクスクス　わらうから飲めるふりして　飲んでるだけさ愚痴があたいを　責め