石橋正次
妹とふたり – 石橋正次
雨だれが 軒端をつたう
妹は 傍らで眠る
坐蒲団を 二つに折って
泣きはれた 瞼が赤い
母は何所(いずこ)に 居るのやら
はぐれて十日目 夜も更ける
春よ来るなら 早く来い
此処に倖せ 連れて来い
木枯しが 表を通る
妹は 数え唄うたう
可愛さに 胸つまらせて
力なく 頭を撫でた
父はいつの日 帰るのやら
みにくい噂も 耳にする
春よ来るなら 早く来い
此処に倖せ 連れて来い
雨だれが 軒端をつたう
妹は 傍らで眠る
坐蒲団を 二つに折って
泣きはれた 瞼が赤い
母は何所(いずこ)に 居るのやら
はぐれて十日目 夜も更ける
春よ来るなら 早く来い
此処に倖せ 連れて来い
木枯しが 表を通る
妹は 数え唄うたう
可愛さに 胸つまらせて
力なく 頭を撫でた
父はいつの日 帰るのやら
みにくい噂も 耳にする
春よ来るなら 早く来い
此処に倖せ 連れて来い
鉄橋をわたると 君の家が見える汽車からとびおり もいちど逢いたい若いふたり つらいふたりむすばれぬ恋に君をすてて 愛をすててふるさとをすてる鉄橋をわたると 君の
夜明けの停車場に ふる雨はつめたい涙をかみしめて さよなら告げるきらいでもないのに なぜか別れたくないのに なぜかひとりで旅に出る 俺は悪い奴だからぬれていない
雪国へ たずねておいでいますぐに 汽車にのり夜明けには 逢えるのさ遠い遠い遠い遠い遠い ふたりじゃないつめたいつららの 格子窓樹氷の鈴をききながら恋の牢屋に と
安い貸間の貼り紙をさがして歩いたあの頃はお前とお茶を飲むたびにマッチの箱が増えてった街も賑わう年の春着たきり雀のジーパンはいて千住大橋たたずめば頬にポツンと小雪
この雨があがればすぐ 俺は旅に出る泣きふしたお前を ひとり残してまだ町は眠りのなか 人は夢のなか傷ついたふたりを 知らないで若い若い出発(たびだち)の 季節は今
落葉をまきあげて汽車は 俺のふるさとへひとりぽっちの夕陽に 消えてゆく急行列車もとまらない ちいさな町だけど恋の願いは おおきくなるばかり帰りたくても 帰れない
あとからどんな くるしみをうけても二人は 後悔しない時間を消して 瞳(め)をとじていまこそ愛の 何かを見よう恋はくせもの なやみつづけて傷つけあうより もっとも
港においらのこして あの娘がきえた夜明け歌を歌っても口笛吹いても どうしても淋しいんだ心がわりも知らずに 命を賭けてもえたあのときめきが きえないきえないとって
午前五時過ぎたのに暗い どしゃぶりの歩道橋ほそい肩ふるわせてひとり 君が駅へいそぐ愛してるそのくせに 愛が云えなくてつかまえることさえも 夢のなかかバカな バカ
夜空にきらめく 小さな星でさえなにかのはずみで 流れるときもある気ままに燃えて 別れたふたりあいつもむじゃきな 奴だけどきっと散らずに 待っててくれるさおれは信
朝にしようか 夜にしようか君を迎えに 行く時は薔薇にしようか 百合にしようか君に捧げる 花束は一年前は 知らないどうし半年前は 友達どうしひと月前は 恋人どうし