水森かおり
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海の子なれば – 水森かおり
私の瞳の 一番奥に小さな海が ありましてホロリ涙を 流す夜は海の匂いが 頬つたう我は海の子 なればなり 白き貝ガラ 耳にあてれば海の響きが 寄せてくる母に抱かれた 子供のようにいつも泣き止む 私です海という字に 母がいて我は海の子 なればなり 今宵大潮 満月の夜私の肩に 唇であなた残した 桜貝そこだけ熱く まだ火照る我は海の子 なればなり 沖ゆく船の マストに灯る明かりは星座の 形して遠くの港を …
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横須賀ラスト・ラブ – 水森かおり
黒いドレスで あたしは唄う星になったあんたに 捧げる恋歌とうの昔に なくした幸せやけに恋しくて さみしくなるの横須賀ラスト・ラブあの日も冷たい雨が降って横須賀ラスト・ラブ泣いて泣いて 泣きぬれてどんな結末(わかれ)でも どんな運命(さだめ)でもあたし…あんたが好きだった 白いドレスは あれきり着ないおどけ顔で笑った ふたりの写真あの日あたしは この街飛び出し夢と引き換えに あんたを捨てた横須賀ラス…
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霧降高原 – 水森かおり
ため息こぼれて 霧になる浮かぶ面影 せつなくて別れの理由(わけ)さえ 知らぬままやっぱりあなたを 終われない霧降高原 ただひとりみれん心を 持てあます この恋かならず 忘れます決めたそばから 逢いたくて私を優しく 抱きしめたあの日のぬくもり 信じたい霧降高原 六方沢橋(はし)の上涙しずくが こぼれます 短い夏の日 惜しむよにニッコウキスゲの 花の群れ来た道泣かずに 戻ったらあなたが待ってて くれま…
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ブルーナイト神戸 – 水森かおり
窓に映った 横顔が別れの時を 探してる星のかけらを 散りばめた街の灯りが 滲んでた優しくなんて しなくていいのよいつかは終わると 知っていたから思い出ほろり 水に流して神戸元町 ひとり背中に風が吹く あなたコートの 襟を立てふたり歩いた 北野坂腕をからめた 冬の夜心はここに ないのにね寂しさだけが ふたりをつなぐたったひとつの 橋だとしても渡らぬことが 私の愛よ神戸元町 旅路の果ての風見鶏 女の涙…
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渡月橋から – 水森かおり
桜の季節に 誘われて想い出たどれば 嵐山そうね あの日は はぐれぬようにあなたはこの手を 握ってくれた二人で渡れば 別れる橋とそんな迷信 笑い飛ばして…渡月橋から めぐる年月(としつき)途切れた恋の 理由(わけ)をさがすの月が渡れば 涙も渡る今でもあなたが 恋しくて 壊れてしまった 幸せを呼んでも戻らぬ 桂川そうよ 愛して 傷つくまではあなたのすべてを 信じていたわざわめくこの胸 竹林(ちくりん)…
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メープル街道 – 水森かおり
私を乗せて 列車は走る紅いカエデが 風に散る車窓(まど)から見える メープル街道秋に染まって 絵葉書みたい紅(くれない)緑 黄色に変わる人の心も 変わってゆくわこの手紙 書き終えたらあなたを 忘れます… 異国の町で 一人になれば迷う心を 決められるカバンに落ちた カエデが一葉風の旅人 私と同じ紅(くれない)緑 黄色に変わる永遠(とわ)の誓いも 変わってゆくわこの手紙 読み終えたら私を 忘れてね… …
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三陸挽歌 – 水森かおり
雪になるよと 海猫がひと声鳴いて 巣に帰る三陸沖を 漁船(ふね)が行く命を見送る 女(ひと)がいるザンザザザン ザンザザザン強い絆を 見ているようでザンザザザン ザンザザザン 私はひとり…涙が流れて 波に砕け散る うねる海原 染めぬいて夕陽が沈む 北みなと漁場の無事を 祈りつつ命を待ってる 女(ひと)がいるザンザザザン ザンザザザン愛の深さが 心に刺さるザンザザザン ザンザザザン もう帰れない…あ…
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龍泉洞 – 水森かおり
やっぱりあなたを 許せないばかな恋です 女です誰が流した 涙を集め青くきらめく 龍泉洞哀しみ捨てに 来たものを恋の傷跡 なおさら痛い 見ていたはずです 同じ夢どこで心は すれ違いどうか教えて わたしの道を両手合わせる 地蔵岩恨みはしない 悔やまない思うそばから 涙が落ちる 形の見えない 幸せをなんで欲しがる 追いすがる未練さざ波 水面(みなも)に揺れて巡る地底湖 龍泉洞思い出捨てに 来たものを浮か…
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北上川旅情 – 水森かおり
かなしみ何処(どこ)に 捨てたらいいの春まだ浅い 旅の空ふらりと降りた 見知らぬ駅は雪の匂いの 残る町戻らない しあわせなんて流してしまえ 涙 涙で遠く振り向く 岩手山やさしく流れる 北上川よ 水鳥たちが 夕陽に染まる羽(は)ばたく明日(あす)を 夢に見てあなたのすべて 恋しくなるの忘れたいのと 思うほど待ちわびた せつなさなんて流してしまえ 涙 涙にいつか黄昏(たそがれ) 舞い降りてしずかに流れ…
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貴船の宿 – 水森かおり
はじめから身丈に合わない 恋ですが結べる縁(えにし)は ありますか雨をあつめて 流れる川とたぎる心は 拒(こば)めない京都 北山時雨かなしい 貴船の宿 逢うたびに抱かれてしまえば 負けてゆくつもった恨みも 望みさえ月の光に さらした肌を責めているよな 小夜あらし京都 草風呂髪も冷たい 貴船の宿 何処までも九十九(つづら)に折れてく 木の根みちふたりの明日に 似てますね風に打たれて 添えない恋が落ち…