拝郷メイコ

  • トマトスープ – 拝郷メイコ

    かすれた声と重ねた過去を刻み続ける 時計の針とぎれてしまう途切れてしまう 二度とここへは 帰ってこまい 最後にきみが 作ってくれる台所からトマトの匂いぼくのすべてに 染みついて記憶を 揺りおこしていくだろう きみの夢も嘘もぼくのうたもこころも溶かしこんでさそのままそのまま消えそうな火で温めて ともだちだ とかたいせつだ とか 割り切れるくらい賢くもない優しくなんて しなくていいよ今さら戻れはしない…

  • ゆうぐれ – 拝郷メイコ

    ブランコたちこぎあなたの隣でまぶたを閉じたら風の音がしたよ このままこの空は橙オレンジそしたらふたりも遊んでられるのに また少し 大人になった証拠に寂しい時 無理に笑ってるの一日でいちばん長い影が行儀よくついてくる ゆうぐれどき きのうと 明日を行ったり 来たりで結局 今日のこと気付かないで いる 変わらない猫背と左目の癖がこの頃大事と 思えてしまうのよ あと少し ゆっくり時よ 流れてきれいな こ…

  • 木綿 – 拝郷メイコ

    洗濯そうの中を のぞきこんでる午前8時だんだん 渦の中 飲み込まれてくこの瞬間少しの満足感と多くの嫌悪感で目が回っていく 君の白いシャツが泡に塗れる キラリキラリ私の淡い恋が溶けてなくなる…あとかたもない程に 金木犀の匂いに うっとり眠りそうな午後1時曖昧な季節ほど心地いいものもないだろうな色づく街路樹の黄色が騒めいた耳澄ませば 君の赤い頬にこの手をあてて確かめていたあの日のまま変われない私を笑う…

  • やさしいちから – 拝郷メイコ

    先に眠ったふりをしてあなたの いびき 待ってた息も たまに忘れるくらい静かな白い部屋長い時間 探してきた答えをやっと 手にできたようゆら ゆら悲しみの シャボン玉たちはじけて消えた いま こころに生まれた やさしいちからのあるだけぜんぶを あげても いいよだから寝返りでそっぽ向かないでね夢から覚めてもずっとそばに いてよ 低いその声が響いてからだの奥が揺れてる私 愛ってわかんないけどこんな だった…

  • サーカス – 拝郷メイコ

    たとえば君の隣で笑えることやふとした拍子に ぶつかる 夏のこの腕小さなテントの中では 忘れてしまうふたりは とうに それぞれの 場所を探して 歩いてるの今はここに立ち寄ったの意味は ないのほんの少しの間の 幻みたいに 季節が過ぎてしまえば 次の街へと吹かれてくようにずっと 旅をするのね ここではなくふたりじゃなく誰かが待つ他のどこか 宙返り ひらり 重力も捨ててライトのまんなか 繰り返すサーカスの…

  • よるのなか – 拝郷メイコ

    みずいろの爪 上手に塗れた 小さい頃に憧れたもの大人になるのは 案外簡単で 思ったより痛くもなかったただ静かな夜を切り刻んでいく 秒針に怯えてただけ 時は止まらず夏がまた来る 体だけ私からがれていく鏡の中の知らないひとが 煙草ふかして こっちを見ていた 電池はずして その音を止めたら あんまり自由で眠れなかった懐しいひと 今もしここにいて こんな私 なんて呼ぶでしょうあの頃のまま 猫みたく あだ名…

  • 手紙 – 拝郷メイコ

    手をとって 過ぎゆく“恋人どうし”ほんのちょっと 振り返る 公園どおり ゆうやけの マーブル模様茜とブルーが混じる ただ毎日 毎日 毎日 君のことを 想って唄うだって 愛より 恋より 何より 君と笑える 日々が欲しい 遠まわり 帰り道 見つけたよあの日 見えなかった 六等星 明日君に会えたらいちばんに 伝えよう ただ 毎日 毎日 毎日 君と夢を 見たくて唄うだって 愛より 恋より 何より君の笑った…

  • 月夜 – 拝郷メイコ

    包まった毛布にまで 伝わってしまう心の奥のほう あたたかい合図言葉や仕草 そのひとつ ひとつ が体の奥のほう 柔らかい場所で 息をするから また 眠れない夜命みたいで 優しい気持ちになる 届かない こんな恋でも 守りたいんだよ痛みは往々にあって それもいいんだよ終わらない その満ち欠けの中で 泳がせて 窓の向こうから 痩せた光が今宵も 私を 照らしてくれる 君の空から 私は小さく手を伸ばしても 気…

  • ブルー – 拝郷メイコ

    悲しいことに君の口をついて出てくる言葉たちは当たり障りないことにすぎず“今”を流れていきます昔の事だって笑える日が私にも訪れるの?今日より 明日この痛みがとおくなっていくのが 嫌 部屋中撒き散らす 飴色の飛沫をガラス 瓶の中 無くなる程 この匂いを 知っている君の腕の 甘い匂いいつまででも いつまででも私を 自由に しないで 子供の頃に咎められたかさぶたを弄る癖は大人になっても 変わらぬまま私の中…

  • くちぶえ – 拝郷メイコ

    君の夢の中まで 届くように 夜風に乗せた思いつきのメロディ未熟な口笛は途切れ 途切れている言葉が見つかれば君のもとへと届くようくちずさもう 澄んだ空の中でまつ毛の先で揺れてる お月様歪んでる心見透かされてしまうよきれいに響かない きれいに 響かない澄んだ空の中へ 電車が 通り過ぎて 消されたメロディくちびる尖らせてもこんなに遠くからじゃすべては 聞こえないだろう 迷子になった私を呼びよせて名前をつ…

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