君を乗せてゆく帰りの電車は、
もう時間通りに来るらしい。
俯いた君の「次にいつ会える?」
震えて、でも笑いながら。
その瞬間に気付いてしまった。
僕の本当の心に。
ふいに浮かんだ、
君が哀しむ悲劇の言葉をきっと、
認めたくないだけなんだろう。
僕は。
いつだって「愛してる」で嬉しそうなその笑顔に、
一度だって「さよなら」を言えるわけないよ。
躊躇いが続くほど、君を哀色(あいいろ)に染める。
この線路(みち)を、踏み切れないでいるんだよ。
吐き出せばそれで終わる一言が、
ただ喉の奥に詰まっている。
それでも待っている君を、
こんな僕にもう縛りたくないから。
恋人でいるラスト5秒は、踏切渡る手前だ。
君も本当は引き止めたいのに、
息を堪えてまで、きっと静かに待ってるんだ。
「さよなら」を。
今日がきっと終点(エンディング)って、
気付いていたように息をつく。
いつもより綺麗な靴は、歩き出すために。
ありがとう。楽しかった。
それだけは、ごまかせない。
そうか僕は、
まだ「好き」のままでいたかったんだ。
何度だって「大丈夫」って、強がりな君は笑う。
その笑顔が、いつも僕を締め付けて痛いよ。
改札を過ぎたなら、僕はもう振り返らない。
哀色(あいいろ)の君を見ないように。
もういいんだよ。哀しいなら、今日は。
笑顔でいなくても……。
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