真木ことみ
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心紬ぎ – 真木ことみ
紅(あか)い 古びた 手鏡を持てば 故郷(ふるさと) 想い出すあの日 寂(さび)しく 暦をめくる母の姿が 今でも胸に…いつか いつかと 帰れなかった心に映る あの笑顔 愛は 燃え尽き 夢は枯れ運命(さだめ) 恨んだ 遠い日々暗い 夜道を 照らしてくれた他人(ひと)の情けに 流した涙…移り 移ろい 季節は廻り絆を結び 花は咲く 山の 息吹よ せせらぎよ果つる 命の 儚さよ強く 生きろと 聞こえた様で…
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幾・春・秋 – 真木ことみ
秋雨 夕暮れ すすきに隠れ鈴虫そっと 雨宿り街角ポツリ 明かりが灯る今宵も誘われ 酔い話酒に 酔いしれ 夜が更けてそんな 女 一人の 人生よ 戸棚の 片隅 重ねた写真あの日の未練 よみがえるこのままずっと 添い遂げようと結んだ小指が 泣いている春を 待ち侘び 過ぎた日々そんな 女 一人の 人生よ 白雪 かぶった 椿の花は散りそで散らない 夢見花平凡だけど 倖せ想い幾つも山坂 越えて来たやがて 誰か…
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くれないの糸 – 真木ことみ
溶けてゆく身の 雪さえ染めて女ごころの 陽炎(ひ)が燃える帰る背中を 見送りながら恨むどころか 恋しさばかり赤い雪です くれないの糸 切れて結んで ほどいてくくる胸でもつれる 恋の糸膝で眠った あなたの頬に落ちるしずくは わたしの涙離さないでね くれないの糸 雪と一緒に 散る気でしょうか河津桜(かわづざくら)が ホロホロと春を待てずに 凍えて咲いてつらいはずです わたしも同じあなたひとすじ くれな…
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カナリア – 真木ことみ
今夜から 雨かしら 窓辺にはカナリアが好きな人 待つように 涙目で外を見て…カナリアの 真似をして 淋(さび)しげに鳴けるなら今すぐに この部屋に 逢いに来てくれますか気休めだけの そんな恋でも 泣いたりはしないわもう誰にも この想い 止められないから…あなたと一緒に 飛べる空なんて ないけれどそれでもいいの 切ないままでも そばにいさせてほしい 前髪が 濡れてるわ 気まぐれなその笑顔帰らずに い…
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天の糸 – 真木ことみ
天の糸です こぬか雨今夜はやけに まとわりついてあんな男は 別れなさいな言って聞かせてくれるけどあゝ女心は あゝ怖いもの鬼と仏の仮住まい鬼があばれて 仏がさとす胸に絡まる みだれ糸 ハァ… 切れて別れて 巡り合うしょせん運命(さだめ)の あやつり人形死んでもいいと 思った人と死ねる女は幸せさあゝ女心は あゝ怖いもの鬼も仏も歯が立たぬ別れの糸を 噛み切る夜更け肩にふるふる 針の雨 ハァ… あゝ女心は…
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ポプラの並木路 – 真木ことみ
青春を刻んだ ポプラの並木路無邪気な二人をそっと 見守る様に…それぞれの未来(あした)へ 向かう別離(わかれ)の朝木漏(こも)れ陽(び)に揺れてる ポプラの花を見たあの日最後に 交わした約束は今はもう 叶える事は 出来ないけれど許されるなら 時代(とき)を超えてあなたに 逢いに行(ゆ)きたい 騒がしい都会の 孤独に迷い込み煌(きら)めくネオンに何故か 涙が伝う…真夜中の画面に 故郷(ふるさと)の景…
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東京しぐれ – 真木ことみ
おまえ残して 三十路で逝ったおふくろさんの心残りは俺が果たすと決めたのさ小窓をたたく 東京しぐれその瞳(め)の中に あゝ からだの中に面影宿した いちず花 白く咲くのも ためらうように俯きながら咲く百合の花恥じらうお前 抱きよせたあの日と同じ 東京しぐれ今さら惚れて あゝ なおさら惚れてさだめを重ねる いちず花 イヤというのは ただ一度だけ別れてくれと言われたときよ俺を見上げる目が潤む二人を濡らす…
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オランダの海 – 真木ことみ
ふたりで過ごした 部屋のかたすみ青いサーフボード あの頃のままオランダの街に 旅立つ背中(せな)に強がりを言って 泣いてたあの日 青空に溶けてゆく あの白い雲のよにあなたの心に 寄り添って眠りたい夢をみて 朝がきて 時は過ぎても切なさつのり ただ会いたくて 今も愛してる 肩寄せ歩いた この帰り道今年もそっと 咲き誇る花オランダの海と あなたの笑顔届いた絵ハガキ 涙でぬれて こんなに哀しすぎる さよ…
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すずらん食堂 – 真木ことみ
すずらん食堂は 踏切のそばでかんかん音聞く めし処おかみさん 親父さんすこし お話 いいかしら私はじめて 最果てあたりひとり旅する おんなです すずらん食堂に あのひとの面影(かげ)を探せば おどけて 見え隠れおかみさん 親父さんたしか一昨年(おととし) 秋のころ海を背にして 三人ならびこれが自慢の 写真です すずらん食堂は まごころが沁みる温かお膳に ついほろりおかみさん 親父さんお酒ひとくち …
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赤いすずらん – 真木ことみ
わたしが あなたを うらぎるかあなたが わたしを みすてるかそんな話も しましたね愛を契った あのときのあのすずらんが 赤い実つけて降りつむ雪に 泣いている どうして わかれて しまったのだれかに よこから とられたのいいえ すべてが 運命(さだめ)でしょう花は枯れても なお生きるこのすずらんの 赤い実だけはわたしの涙を 知ってます 可愛いおしゃれな 服を着て訪ねてきたのよ 知床へこれが出直す ひ…