浅川マキ
裏窓 – 浅川マキ
裏窓からは 夕陽が見える
洗濯干し場の梯子が見える
裏窓からは
より添っている ふたりが見える
裏窓からは 川がみえる
暗いはしけの音が聞こえる
裏窓からは
ときどきひとの別れがみえる
裏窓からは あしたが見える
三年前はまだ若かった
裏窓からは
しあわせそうな ふたりが見える
だけど 夜風がバタン
扉を閉じるよ バタン
また開くよ バタン
もうまぼろしは 消えていた
裏窓からは 川が見える
あかりを消せば未練も消える
裏窓からは
別れたあとの 女が見える
裏窓からは 夕陽が見える
洗濯干し場の梯子が見える
裏窓からは
より添っている ふたりが見える
裏窓からは 川がみえる
暗いはしけの音が聞こえる
裏窓からは
ときどきひとの別れがみえる
裏窓からは あしたが見える
三年前はまだ若かった
裏窓からは
しあわせそうな ふたりが見える
だけど 夜風がバタン
扉を閉じるよ バタン
また開くよ バタン
もうまぼろしは 消えていた
裏窓からは 川が見える
あかりを消せば未練も消える
裏窓からは
別れたあとの 女が見える
夜が明けたら一番早い汽車に乗るから切符を用意してちょうだい私のために一枚でいいからさ今夜でこの街とはさよならねわりといい街だったけどね夜が明けたら一番早い汽車に
ちっちゃな時から 浮気なお前でいつもはらはらする おいらはピエロささよなら お嫁に行っちゃうんだろいまさら気にするのか 俺をちっちゃな時から 俺の近くにはいつも
不思議な橋が この町にある渡った人は 帰らない昔、 むかしから 橋は変わらない水は流れない いつの日も不思議な橋が この町にある渡った人は 帰らないいろんな人が
船乗り稼業の みなし子ジロー黒い肌が ますます黒く遠洋航路を 船行く時は海の男も聞き惚れる 惚れるんだ赤い夕日に 祈りをこめて奴が唄うよ アーメンいつしかあだ名
とぼとぼと歩いて行くあの淋しい道この高いビルの窓から見えるあの道もしも あなたが旅立つなら見てごらん もう一度とぼとぼと疲れ果てて歩くあの道をとぼとぼとあなたが
今日は あの娘の亡骸(なきがら)に逢いに来たのさ セント・ジェームス医院ここは貧しい病院の白く冷めたいテーブルの上あの娘の顔は 青黒い貧弱 静か 美しいいまは
あの……あの男がもしも 本当に死んだらこの世は天国皆んながそう言うのあの男が死んだら夜明けの道には朝日がなんて素適な目覚めあゝ そんな気分あの男が死んだら皆んな
ぼうや そんなに泣くのならそんなに ねんねが きらいなら砂漠の星へ捨てましょうか砂漠の星は 赤い星赤いお馬が 走って行くぼうや そんなに泣くのならそんなに ねん
今日 この部屋に西日(にしび)が あたりました近いうちにこの部屋出て行く今夜も窓の外靴の音かと耳を澄ますとあれは遠い日のロマンスわたしはもうじきこのアパート出て
こころはむしばみわたしはブルーいやな日々が続くこゝろの病(やまい)はあてどなくひろがりいやな日々が過ぎて行くだけどもいつかはわたしも逃れるこんな暗い日々をやがて
町の酒場で酔(よ)い痴(し)れた女(おんな)に声をかけてはいけないどんなにあなたが淋しい時でも昔あなたが恋したひとに似ていても声をかけてはいけない町の酒場で酔い
こんな風に過ぎていくのならいつか 又(また) 何処かで なにかに出逢うだろうあんたは去ってしまうしあの娘も あっさり結婚今夜程 淋しい夜はないきっと今夜は世界中
盲のカラスが 枯木の下でしゃれこうべつついて 笑ってるカラス どうした ひもじいかおまえの口は なぜ紅いおまえ あんなに 胸さわがせて探しまわった あの女どの手