柴田聡子
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Passing – 柴田聡子
長い長い渋滞の静けさに雨見つけてほしいから探すように光ってる高速の出口 泣くのこらえながら思ったよりもはやく大人になるとっさのひらめき握りしめた手のひらたまにひらいてみる 「ここ2ヶ月いそがしいの?指が痩せるほど」見抜いていたきみの前ではとくにしぶとくいたくて とりどりの花が一気に開く蒸し暑い朝まで眠れないとしても夜毎窓に耳をあて聴こえるままさえずる たのしそうに溢れる人混みに押されて彩られていく…
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チョココロネをたべるのどっちから? – 柴田聡子
チョココロネ たべるのどっちからあたまから派? おしりから派?あたまから派 おしりから派 そもそも こっちがおしりでしょいえいえ そっちはあたまでしょチョココロネ論争 けりつかぬどっちだって おいしいでしょ チョココロネ チョココロネ先っぽをちぎって チョコつける チョココロネ チョココロネふたの紙についた チョコなめる チョココロネ チョココロネ太い方から ばくばくたべる チョココロネ チョココ…
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目の下 – 柴田聡子
何も無いけどここへ外の空気を吸いにどうということもないよくあるお出かけ 影、雲、木の幹、傘、あたる雨の粒、数大きいだけでときめき 交わす言葉はひとつだけでも枝葉をつけては伸びてそうだったら、そうかも、そうでありますように 声、足音、衣ずれ、冷蔵庫の開け閉め大きいだけで怖い 目の下にくすんだ赤、黒、乾いた白拭うのもちょっとためらわれるくらい話す素振りもない持っておけないのに離しがたいひとり噛み締める…
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Side Step – 柴田聡子
Side Step……Side Step…… でかい穴は期待され覗き込まれているきっと何かがあるはず 潜んでいるはず予想や想像を捨てて周りを回り続けてみてステップをひらめく褒め言葉を探しながら嫉妬 フレッシュなステップ砂を蹴るステップ瞬間のステップ曇りないすごい明快な数回のステップ遠心力にまかれて有意義も無意味もふらふら Side Step……Side Step…… 全員足元仕組まれたみたいおくれ…
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素直 – 柴田聡子
『ある日から君の目は空に開き視線は日差しとして注ぎ』ふっと出た決まりに座りこみ すがり 『子どもらしくね簡単ですぐ人にわかるよろこびの言葉でいてね』不安でほほえみかける どんな口ぶりで どんな音で話していたのかなんて自分では忘れるすりかわっていく ああだったとか こうだったとかそうだったっけ?そうだったって話せないのを受け入れられないでいる その声で言ってくれないとわからなくなりそうになるその声で…
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Reebok – 柴田聡子
こうしてるのもよしてラテでも買いに出ようよ投げ出した右足で空中に描く丸着替えない服を見てもう何日だろう いまにも雨が降りそうむこうの空もにび色この部屋を見渡しても傘以外しかないのけぞって笑うかわいた喉がせきこむ 背中から巻きついてかたにあごを置いて犬のまねをしたら泣き出した信号が変わったらかんたんに腕をほどいて 踊るように雨のなかを光も影も連れずはじけ飛んできみが笑えば笑うようなつまらないわたしで…
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うつむき – 柴田聡子
帽子の厚い毛で隠れたうつむく横顔画面いっぱいに映る眉毛から唇の下まで踏みしめる雪の音だけつぎからつぎへと吐く息が前を邪魔する自分のものじゃないみたいに 考え事は浮かんでは消えていく丸めて放り投げて 振り返るのも寒い途切れなくしんしんと降りてくる綿の中を行くあの壁にタッチして帰り道になるまで うつむきながらでもふしぎに歩いているうつむきながらでもふしぎに歩いている 奥行きもなく一色に閉じ込められてる…
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Movie Light – 柴田聡子
Heyなんだか変だよ予告はまるく白い光のエンドロールキャラメルを塗って舐める本の端紙の味の甘さにめくるのがとまらない指 波打つ絨毯のふくらみで沿ってゆがんで澄ます脚の影ここからなにが起こるんだろう?となりからひらひらみみうちが「ずっとずっとこうだよ」 映し出される人がまどう灯ってるMovie Lightラブラドールの波にこのまま眠ってしまいそうハプニング 逃げよう 早く凪の瀬へさきみだれる花のよう…
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Your Favorite Things – 柴田聡子
息も詰まる夏天井まで届きそうな背目の耳のおかしくなるできそうでできないダンスできそうでできないウェーブこれはなんの香り長い白い中指 きみの好きなロックンロールをひとりで見ているよ瞳と瞳に映る星が同じだった頃をだめもとで思い出す瞳と瞳のあいだにトンネルがありますように今は好きじゃないとしても 東に流れる雲を眺めながらバスに乗って山のふもとまで行くこと Your Favorite誰からの誘いがあっても…
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Kizaki Lake – 柴田聡子
Pleaseジジッ 鳴き切る蝉ピピッ くろつぐみリリッ 軽々秋 リリリリリリリリンー?ききかえす靄に木々ひそひそ話キキッ ストップしてリンリンリン鳴らす羽根 サップがうねる木立のスリットで場面になるオールがみずうみの金型の中を均して亀が岩に一列にわずかな波が苔立つ墨の匂いを吹きかけ延々けぶる桟橋 崩れそうに落ちそうになると無邪気を混ぜて飛ぶ青トンボここからだとせわしないプレパラート近づけば爪が欠け…