日食なつこ

あるエゴイストの冒険記 – 日食なつこ

遥か遠く地平線の向こう
世界の全てがあるらしい
名誉か金かは分からない
何せ誰も見たことがない

ある国では皆に推され
ひとりの男が立ち上がった
世界の全ては必ず
私がここに持ち帰る と

故郷の期待に見送られ旅立つ彼は呟いた
“そう誰もが自己主義者彼らのため俺は行くのさ”

粋狂な名声
つまりは世界の全てを求めて
呆れるほど人は競い
そして当たり前に争い出す

研かれた刀身は敵の希望を切り裂いた
彼は押し負けもせず向かい来る敵方に飛込んだ

居るべき場所があるから
守るべき人がいるからこそ
人は人を押し退けた
進め Mr.エゴイズム

彼の理論じゃ強さは
背負ったもののでかさで決まるから
一国の期待を背負った彼は
強さを自負して勝ち抜ける

1人また1人としとめては呟いた
きっとこいつも自己主義者
貧欲ゆえ俺にゃ及ばないさ

戻るべき場所があるから
守るべき人がいるからこそ
風も空も差し置いて
進め Mr.エゴイズム

最後の相手を打ち負かし
彼はただ1人生きていた
死ぬ間際の戦士は誰もが空を見上げて
“ごめんな”って言った

最後の相手を打ち負かし
彼の脳裏を疑問がよぎる
“自分のためだけの戦いで
こんなに綺麗に死ねるのか?”

焦燥に空見上げれば太陽が目を刺した
「お前こそ知るべきだ
優越にまみれたエゴイストよ」

さぁ浮かぶは戦士らが
最愛の人に誓った過去
“君のため必ず世界の全てを持ち帰る”と

太陽は閉口し彼は途方にくれた
“俺こそが自己主義者
みんな誰かのため戦ったんだっていうのに…”

戻るべき場所があるから
守るべき人がいるからこそ
人は強くなれること
今さら気付くなよ

彼は世界の全てを
確かに 確かに手に入れた
物語はこれからだ
進め Mr.エゴイズム

泣くな Mr.エゴイズム

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