日食なつこ

  • どっか遠くまで – 日食なつこ

    言葉もないまま連れ立っていく 道すがら気づく野ざらしの幸福それはいつか夢にまで見てた風景誰にも言わないでポケットにしまっていく晴れでも雨でもシャッターを切る 朝でも夜でも誰かの声がするそれはいつか恐れたあたたかい場所バレてしまわぬように 逃げ出さないように 「随分と贅沢をしているな」 遠い日の僕はそう嘲笑うだろうけなす指先には無数の傷痕 本当は人を信じてみたかった 「どっか遠くまでゆけますように」…

  • leeway – 日食なつこ

    leeway 立ってらんないほどの強い風に煽られNow is the time 今日が恐らくその日なんだと理解する leeway 急拵えだったにしてはよく出来たNow is the time 鳥の巣みたいなこの居場所を振り返る 風圧と向きは日々変わって ついていく以外の生き方がない僕をどうか赦さないで これ以上与えないで 飛び立ちたくもないのに飛んだ 羽ばたきで巣はほころび落ちた僕がやってしまった…

  • 五月雨十六夜七ツ星 – 日食なつこ

    この身はどこにも行けやしない そんな夏が始まる 夏の影に浸食される街 コントラストに目が眩んでゆく立ち昇る誰かの光に上書きされてしまわないように 夏の影に追い立てられる街 夢なき者はここじゃ亡霊さことあるごと僕が誰かを確かめても見失ってしまう 逃げ込んだ高架下 ざわついた皮膚の下 熱い息を吐いたひそやかに魔が差した ここに来たこと後悔した? そんなわけはないんだ たった1人で何かをまだ信じている …

  • julep-ment flight – 日食なつこ

    海岸線 誰より遅い速度でゆく 季節は春 にはちょっと早い枯れた草と砂と重い潮風が似合う 色の淡い 君という存在 放っておかれたい気持ち携えて飛ぶ 秘密のフライト 高鳴るテイクオフ成層圏 高く透きとおってゆくsunrise 長いこと 待ちわびた空だ はじめまして、僕はずっと知っていたけど 不純な動機を右手に ちょっと雲の上までひとっ飛び遠くまでゆける羽になるんならば問題はないや模範解答には程遠い 僕…

  • 風、花、ノイズ、街 – 日食なつこ

    真昼の 白い光を浴びてガードレール発光中 等間隔 この街を測るものさしのようだ 終わらない 都市開発見守って交互通行を待つ 秒、10、9、8、7、この街の寿命を数えるようだ 風、花、ノイズ、街、君、僕、世界、とかが揃って 整って easygoing Saturday forenoon 全てが上手くゆく幻に ここに来てまだ 囚われている横目でちらと交わし合う この愛の明日も たかが知れてる全てが上手…

  • 0821_a – 日食なつこ

    アルデバラン燃え盛る 太陽より遥か向こうにいる赤く点滅する星たちは もうすぐ終わる定めにある君が生きたその一生は 君自身に何を与えただろうオレンジにきらめくその熱は 何かを叶えたあとの光か 摂氏マイナス10を切る この冬はひどく饒舌である銀色に弾ける電線が あらゆる言葉を切り刻む僕が消えるその一瞬に 僕自身は何も感じぬだろうまっ黒く抉れる土の上 悲しみ 怒り いつかは果てる この命が止まって ほど…

  • appetite – 日食なつこ

    多くは望まないそんな僕でどうにかこうにかここまではやってきましたちょっぴり無理して手にした日常 今を幸福と思いたいひっくり返る心配もない道 つまずく石くらいしかない 嗚呼何かが足りない なんでか空しい 風が本音を転がしていく 多くを語らない君は僕とそんな風のなか出遭ってしまった一体何を考えてるか分かんない同士で向かい合ったどっちが先に蓋を開けるかかけ引きにも似た感情だきっと今足りない何かがここで見…

  • 蜃気楼ガール – 日食なつこ

    垣根からあふれた蝉の声気を取られた一瞬で君は水蒸気のように変わっていく立ち昇るいくつもの感情 隠せない本当の思い 加速する熱にやられ眩暈気がつかない透明な君は蜃気楼のように遠い立ち昇る毎日の向こうに 消えないでくれよ 乾いた喉を潤す言葉を僕は知ってるはず ひとりぼっちの蜃気楼ガール 届かないまま夏が過ぎる触れたいよ蜃気楼ガール 諦めれば夏は終わる君もこの恋も幻にはしない 白い肌 遠のく蝉の声満たさ…

  • diagonal – 日食なつこ

    君の涙は宝石になると言ったあの日の貴方へ あたしの涙はまだ涙のままです 必死の抵抗も虚しく夕陽は落ちたあの日のあたしは 優しい夢じゃない 冷たくても現実 それがそれが欲しかった 慰めなんかいらなかったなのに貴方は連れ去った 優しい夢の向こうへ しんしんと音もなく空に夜は降った離れないでと貴方が握る左手を振り払った 必死に叫ぶ声 「君を守るために来たのに」それじゃ駄目だって分からない人とこの橋は渡れ…

  • やえ – 日食なつこ

    話すことはないけど会いましょうって春の宵排気ガスを浴びて終わらない夢を見る巻き上げるダストが突き刺さって涙目ちょうどよく覗き込む見知った顔がにじむ 行くあてもないまま歩きましょうって春の宵境目をなくして淡い夢に落っこちるほとんどもう破綻している世界においていまだ狂わずにいるその影が 揺らいでばっかのこの道の先でどれほど光だったか知れない 話せば話すほど溺れていく春の宵ひと挿し早咲きの八重の桜眺むあ…

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