日食なつこ

  • 閃光弾とハレーション – 日食なつこ

    真夜中に火がついちゃって ほとばしるまま吠えている一度でも書いたら消せぬペンで 戻れぬ道に名を刻む 追い抜けば追い抜かれちゃって 最初から殺気立っている一度でも屈したらそれで最後 絶えず声を張り上げている 愛し優しい人のそばで 揺れる花にはきっと成れぬ勝つか負けるかそれ以外がないこの命の価値を問う 閃光弾のように今夜光を伴い飛んだとして高さも距離も角度も覚悟も何ひとつ曖昧なままで飛び込むあのハレー…

  • vacancy – 日食なつこ

    成し遂げた夢が 素晴らしければそうであるほどその先の道の果てしなさに お前はいつか迷うだろう張り上げた声が 遠く響けばそうであるほどその先に襲いくる沈黙に お前はきっと負けるだろう 取り合った手が 通じ合っていればそうであるほどそれをほどいた後の虚しさに お前は打ちのめされるだろう高鳴った胸が 冷めやらねばそうであるほど寄り添ってくれはしない世界を 俺たちは恨んでしまうだろう ここで立ち止まれたら…

  • 夜刀神 – 日食なつこ

    毎晩頭を垂れては よろずの神に乞い願っている今宵でこんな苦しみは どうか終わらせてはくれまいかとさりとて僕の徳が足らんか はたまた贄のひとつも欲しいか毎晩頭を垂れても どこの神の救いもご加護もねぇんだ 人間切羽詰まればそう、いとも容易く踏み外せるのさ限界を超えてしまえばもう、堰を切って溢るる凶暴な性猥雑な人の皮を脱ぎ捨て 離脱していく罪悪を得る今宵の僕などいい事例 御覧じろ世紀の転落劇 こんな状況…

  • i – 日食なつこ

    風通しのいい日々だ うすら寒い懐ふたつ僕とお前 指差し合い 笑っても解決しないことだらけ傷を舐め合う より他なく 最善など 取れるわけなく妥協に妥協を重ねていた あの日々は遠く苦く眩しい 見通しの悪い日々に うすら寒い約束ひとつ僕とお前だけに通じる 暗号は増えても金にはならずいつの日かが いつなのか 結んだ誓いは 生きているか挫折に挫折を重ねていた あの日々は遠く苦く眩しい あのさ、僕はさ、 片付…

  • ラスティランド – 日食なつこ

    壊れてはいないからという理由だけで存在をし続けるいつかの夢の名残り その場所にあるものはとうに皆朽ちてしまった触れてももう動かない ただ佇むだけ もう乗せてくれることはないのね もう遊んでくれることはないのねもう歌ってくれることはないのね もう手をつないでくれる日は来ないのね 色鮮やかなのはもう思い出だけなんだな全て忘れ止まる時をただ待つラスティランド僕だけが未来に往けるその悲しさをこうしてここで…

  • どっか遠くまで – 日食なつこ

    言葉もないまま連れ立っていく 道すがら気づく野ざらしの幸福それはいつか夢にまで見てた風景誰にも言わないでポケットにしまっていく晴れでも雨でもシャッターを切る 朝でも夜でも誰かの声がするそれはいつか恐れたあたたかい場所バレてしまわぬように 逃げ出さないように 「随分と贅沢をしているな」 遠い日の僕はそう嘲笑うだろうけなす指先には無数の傷痕 本当は人を信じてみたかった 「どっか遠くまでゆけますように」…

  • leeway – 日食なつこ

    leeway 立ってらんないほどの強い風に煽られNow is the time 今日が恐らくその日なんだと理解する leeway 急拵えだったにしてはよく出来たNow is the time 鳥の巣みたいなこの居場所を振り返る 風圧と向きは日々変わって ついていく以外の生き方がない僕をどうか赦さないで これ以上与えないで 飛び立ちたくもないのに飛んだ 羽ばたきで巣はほころび落ちた僕がやってしまった…

  • 五月雨十六夜七ツ星 – 日食なつこ

    この身はどこにも行けやしない そんな夏が始まる 夏の影に浸食される街 コントラストに目が眩んでゆく立ち昇る誰かの光に上書きされてしまわないように 夏の影に追い立てられる街 夢なき者はここじゃ亡霊さことあるごと僕が誰かを確かめても見失ってしまう 逃げ込んだ高架下 ざわついた皮膚の下 熱い息を吐いたひそやかに魔が差した ここに来たこと後悔した? そんなわけはないんだ たった1人で何かをまだ信じている …

  • julep-ment flight – 日食なつこ

    海岸線 誰より遅い速度でゆく 季節は春 にはちょっと早い枯れた草と砂と重い潮風が似合う 色の淡い 君という存在 放っておかれたい気持ち携えて飛ぶ 秘密のフライト 高鳴るテイクオフ成層圏 高く透きとおってゆくsunrise 長いこと 待ちわびた空だ はじめまして、僕はずっと知っていたけど 不純な動機を右手に ちょっと雲の上までひとっ飛び遠くまでゆける羽になるんならば問題はないや模範解答には程遠い 僕…

  • 風、花、ノイズ、街 – 日食なつこ

    真昼の 白い光を浴びてガードレール発光中 等間隔 この街を測るものさしのようだ 終わらない 都市開発見守って交互通行を待つ 秒、10、9、8、7、この街の寿命を数えるようだ 風、花、ノイズ、街、君、僕、世界、とかが揃って 整って easygoing Saturday forenoon 全てが上手くゆく幻に ここに来てまだ 囚われている横目でちらと交わし合う この愛の明日も たかが知れてる全てが上手…

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