日食なつこ
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0821_a – 日食なつこ
アルデバラン燃え盛る 太陽より遥か向こうにいる赤く点滅する星たちは もうすぐ終わる定めにある君が生きたその一生は 君自身に何を与えただろうオレンジにきらめくその熱は 何かを叶えたあとの光か 摂氏マイナス10を切る この冬はひどく饒舌である銀色に弾ける電線が あらゆる言葉を切り刻む僕が消えるその一瞬に 僕自身は何も感じぬだろうまっ黒く抉れる土の上 悲しみ 怒り いつかは果てる この命が止まって ほど…
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appetite – 日食なつこ
多くは望まないそんな僕でどうにかこうにかここまではやってきましたちょっぴり無理して手にした日常 今を幸福と思いたいひっくり返る心配もない道 つまずく石くらいしかない 嗚呼何かが足りない なんでか空しい 風が本音を転がしていく 多くを語らない君は僕とそんな風のなか出遭ってしまった一体何を考えてるか分かんない同士で向かい合ったどっちが先に蓋を開けるかかけ引きにも似た感情だきっと今足りない何かがここで見…
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蜃気楼ガール – 日食なつこ
垣根からあふれた蝉の声気を取られた一瞬で君は水蒸気のように変わっていく立ち昇るいくつもの感情 隠せない本当の思い 加速する熱にやられ眩暈気がつかない透明な君は蜃気楼のように遠い立ち昇る毎日の向こうに 消えないでくれよ 乾いた喉を潤す言葉を僕は知ってるはず ひとりぼっちの蜃気楼ガール 届かないまま夏が過ぎる触れたいよ蜃気楼ガール 諦めれば夏は終わる君もこの恋も幻にはしない 白い肌 遠のく蝉の声満たさ…
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diagonal – 日食なつこ
君の涙は宝石になると言ったあの日の貴方へ あたしの涙はまだ涙のままです 必死の抵抗も虚しく夕陽は落ちたあの日のあたしは 優しい夢じゃない 冷たくても現実 それがそれが欲しかった 慰めなんかいらなかったなのに貴方は連れ去った 優しい夢の向こうへ しんしんと音もなく空に夜は降った離れないでと貴方が握る左手を振り払った 必死に叫ぶ声 「君を守るために来たのに」それじゃ駄目だって分からない人とこの橋は渡れ…
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やえ – 日食なつこ
話すことはないけど会いましょうって春の宵排気ガスを浴びて終わらない夢を見る巻き上げるダストが突き刺さって涙目ちょうどよく覗き込む見知った顔がにじむ 行くあてもないまま歩きましょうって春の宵境目をなくして淡い夢に落っこちるほとんどもう破綻している世界においていまだ狂わずにいるその影が 揺らいでばっかのこの道の先でどれほど光だったか知れない 話せば話すほど溺れていく春の宵ひと挿し早咲きの八重の桜眺むあ…
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夕闇絵画 – 日食なつこ
グレイオレンジ街は夕暮れ 途絶える風 サイレン覚えておきたい景色は多くはない そう今目の前の君以外にないのさ グレイオレンジ街に通り雨 君が伸ばした手叩きつけられて潰える2秒前の哀れな雨粒を受け止めた あれが僕じゃないこと 妬んでしまうなんてどうしようもないな気がふれてしまう前にもう 帰ろう 何ともなしに君が歩く風景に立ち入ることすら許されぬ僕それじゃまたねと分つ三叉路で「また」などないって気がつ…
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幽霊ヶ丘 – 日食なつこ
とうに見頃も過ぎ去りて寒空に穂を揺らす芒原誰の面影を そこに重ねてる 孤独を望む逃げ場を探す必要のない命もあると知る想い遂げられた とて続かぬだろう 風もなき 悠久の丘にて綴ったいたずらな恋を迎えに来る人ついぞ現れず絵空事の朱い火燃ゆ 見渡せども幻影ばかりでどっちつかずの足場に吹き溜まる野分裾濡らす 恋路よるべなく 風ゆらぎ 幽閉さるるここへ吹いたうちひさす京の謡い踊る息吹不意に胸を打つ絵空事を望…
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ダム底の春 feat.Sobs – 日食なつこ
お気に入りの場所を誰にも教えないまま何度目の春今日も水位はひどく低い無人のダム 干からびたダム 適宜適切な距離誰とも測れないまま快適な日々こんなとこに一緒に来たい人も思い浮かべられない 昨日は確かどしゃ降りの雨だった溢れ返るくらいを期待して来たってのに拍子抜けさ そこらじゅうに花が咲いてて足の踏み場もないくらい春こんなことになるなら買わなくたってよかったな 助手席に寝かせた花束 ぶら下げて向かう先…
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ライオンヘッド – 日食なつこ
ライオンヘッドは風に揺られ 今日も孤高をたなびかす遠方跳ねるガゼルの群れ 襲うのだって勇気がいる 「ライオンヘッドに近づくな」 その荒野の合言葉逃げ出す一瞬誰の視線も恐怖以外の何かが光る 空腹でもないのに襲ったりするかいな爪、たてがみ、牙が揃ってるだけでこの有様さ ライオンヘッドは風に揺られ 今日も耳をそばだてる遠方水辺ゼブラの群れ 笑った声で空気が割れる ライオンヘッドの荒野にある日迷い込んだ人…
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クロソイド曲線 – 日食なつこ
体感速度よりずっと速くやってきた朝に打ちのめされつつ急勾配を鈍牛の如く這い登る僕もっと遅い君 この坂を登り切ったらもう終わりでいいだろうもう歩けやしない 2人分の疲労 正しい速度でさっと僕ら追い抜いた影に打ちのめされつつ急勾配あと少しだアルコホル残る僕もっと酷い君 この坂を登り切った先に続きがなくとも 明日を描くであろう 2人分の愚行 手を取り合って一直線 穴だらけの羽で飛んでいた障害物避けられな…