安藤祐輝

追焚 – 安藤祐輝

せっかく沸かしたお風呂も
君を待っていたら冷めてしまったよ
いつか君の気持ちさえも
こんな風に冷めてしまうのかな

「追い焚きをします」アナウンスのように
君との関係も温め直せたらいいな
なんてくだらないこと考えてたら
いつの間にか朝になったよ

ゆらゆら揺れる水面に
僕たちはゆっくり足を伸ばす
「熱いね」なんて言いながら
はしゃぐ君をこのままずっと見ていたい

あの日君が言ったこと「もう無理
なんて泣いた君
今になって気付いたんだ
「変わってないね」と君が言う
それだけ残して出て行ったその背中を
僕はただ
見つめることしかできなかったんだ

ゆらゆら揺れる水面に
僕たちはゆっくり身を委ねる
「狭いね」なんて言いながら
はしゃぐ君をこのままずっと見ていたい

ピカピカに磨いた浴槽
「今日はちゃんと洗ったよ」
そんなこと知らせる相手は
「もういないのか」と呟いた

「お風呂は沸かせませんでした」
僕はそっと、栓を抜いた。

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