坂東玉三郎

アコーディオン弾き – 坂東玉三郎

可愛いあの娘(こ)は街の娼婦
馴染みの客に身をまかせて
おつとめがすむとおしゃれをして
出かける先はダンスホール
相手はここのアコーディオン弾き
かなでる歌のしらべはジャバ

みんな踊りあの娘だけは
踊ろうともしないで
燃える瞳こらしながら
見つめるのは彼だけ
そのきれいな指の先に
恋する胸はふるえ
身体中が歌いだして
身も世もなくしびれる

あの娘は泣いてる街のすみで
恋人は今 戦さにいる
無事に帰れば二人だけの
小さな店を持つ約束
そして毎晩 あの娘のため
かなでる歌のしらべはジャバ

遠く耳に聞こえる音楽(おと)
なつかしく口ずさみ
闇に瞳こらしながら
追うのは その姿よ
そのきれいな指の先に
切なく胸はうずき
身体中に涙あふれ
身も世もなくかなしい

ひとりぼっちの街の娼婦
今は男も 通りすぎて
恋人はもうこの世にいない
あの娘は向うダンスホール
見知らぬ若いアコーディオン弾き
かなでる歌のしらべはジャバ

きこえる……
きこえるジャバ……
瞳とじれば……
昔のまま……

そのきれいな指の先に
裂かれる胸の痛み
身体中がさけびだして
あの娘は踊り狂う
やめて……やめて アコーディオン

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