中条きよし

矢切の渡し – 中条きよし

「つれて逃げてよ……」
「ついておいでよ……」
夕ぐれの雨が降る 矢切の渡し
親のこころに そむいてまでも
恋に生きたい 二人です

「見すてないでね……」
「捨てはしないよ……」
北風が泣いて吹く 矢切の渡し
噂かなしい 柴又すてて
舟にまかせる さだめです

「どこへ行くのよ……」
「知らぬ土地だよ……」
揺れながら艪(ろ)が咽(むせ)ぶ 矢切の渡し
息を殺して 身を寄せながら
明日へ漕ぎだす 別れです

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夢おんな – 中条きよし

旅に出てゆく前に 遠く別れる前にいちどだけでもいいわ だいてください なんて馬鹿(ばか)なみれんは この酒に捨てろよのみなよ のみなよ つらいなら胸の涙を なが

おんなは灯り – 中条きよし

くちびる ため息 おんなの匂い指先 手さぐり おまえの温(ぬく)み夢でみたみた おまえの胸に旅の淋しさ 埋ずめに行こうおれが船なら おまえは港いのち いのち い

すきま風 – 中条きよし

人を愛して 人はこころひらき傷ついて すきま風 知るだろういいさそれでも 生きてさえいればいつか やさしさに めぐりあえるその朝 おまえは 小鳥のように胸に抱か

抱擁 – 中条きよし

頬をよせあった あなたのにおいが私の一番好きな においよ目をとじて いつまでも踊っていたい 恋に酔う心泣きたくなるほど あなたが好きよもしもあなたから 別れの言

冬花火 – 中条きよし

夜更けのガラス窓を つたう雨は別れた女の 泪に似てる意味なく小指で あいあい傘をかくのが 寂しいくせだった不倫という名の 手荷物をふやしておまえはどこにいるこの

旅愁 – 中条きよし

あなたをさがして此処(ここ)まで来たの恋しいあなたあなた 今何処に風にゆれ雨にぬれて恋は今も今も燃えているのに ああ……白いほほえみも うしろすがたも遠い夢の中

キャラバン – 中条きよし

もしも かなう ことなら世界中で 一番愚か者と いわれようたった一人だけのために 生きて 死んだ馬鹿な 奴と 云われよう変らぬものを人はどれほど数えられると 云

おまえの夢 – 中条きよし

おんなの夢を こわす男に出会ってばかり 来たんだろう冷たい手だね 細い指先おれでよければ 抱いて眠ろう何にもやれない やれないけれどすきな様に 夢でも見なよ……

遙 – 中条きよし

遙… さみしい名前だね遙… こんなに惚れさせて遙… どこを見ているの過ぎた日は 忘れろよ想い出は ふりかえるなよそうさ 遙 あたらしい愛を俺に 俺に あずけてほ

夢を求めて – 中条きよし

やっぱりおまえは この部屋に今でも暮らして いたんだね夢を求めて 出て行った俺の心は 人の世の風の寒さに こごえかけおまえの処(ところ)に 帰って来たよ敷居の高

恋吹雪 – 中条きよし

あなたが浴びる湯の音がせせらぎみたいに 聴こえますゆきずりのゆきずりの あゝ夢一夜墜ちてみたって かまわない燃えて散れ散れ 恋吹雪陽(ひ)なたのような その胸に

うすなさけ – 中条きよし

浮気じゃイヤよ 本気で惚れて私にはいつだって 恋は命がけ遊びじゃないと 口では言って今日もまた来ない人 あなたうすなさけ新しいパジャマを買いました あなたのため

鴎の港 – 中条きよし

群れから一羽 はぐれた鴎夕陽に向かって 啼(な)いているざんぶら ひゅるひゅる ざんぶらこここは見知らぬ 港町心が寒い 体が寒いしぶきに打たれりゃ なお寒いざん

やっと逢えたね – 中条きよし

さがしたよ 黄昏の東京気づいたよ おまえしかいないと肩に手をかけ 抱きしめた細いからだが きしむほど逢えたね 逢えたね やっと逢えたね風邪ひくよ 霧が降る横浜辛

泣かないよ – 中条きよし

かまい過ぎるから嫌われたんだねおしきせ ばかりのやさしさだからほかの誰かに 目移りしてさシャボン玉のように男が消えたよけどさ 本当はさむしゃぶりついてでも別れた

さざんかの宿 – 中条きよし

くもりガラスを 手で拭いてあなた明日が 見えますか愛しても愛しても あゝ他人の妻赤く咲いても 冬の花咲いてさびしい さざんかの宿ぬいた指輪の 罪のあとかんでくだ

男の忘れもの – 中条きよし

俺が年(とし)だから あいつもいい年バーの片隅 それでも逢いたい…何がふたりを 切れさせた鈴なりの麗人(おんな)に 瞳(め)が眩(くら)みつづけてどじだろ どじ

三百六十五日 – 中条きよし

三百六十五日 つかみどころのない街であなただけを 頼りに生きた 明日(あした)もみずに三百六十五日 夢を見たのはいつ頃か思い出せず 街並みれば 季節は冬か夕暮れ

グッバイ ラブをあなたに – 中条きよし

グッバイ ラブ この手をはなしてグッバイ ラブ 夢から覚めたのどこかでおとした 倖せを他人(ひと)のせいには したくないけど最後と決めてた 恋でしたそれほどあな

長良川艶歌 – 中条きよし

水にきらめく かがり火は誰に想いを 燃やすやらあなた あなたやさしい 旅の人逢(お)うたひと夜の 情けを乗せてこころまかせの 鵜飼い舟好きと言われた 嬉しさに酔

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