中島みゆき

  • 噤 – 中島みゆき

    夜もまだ明けない 冷たく蒼い空小さな噤(つぐみ)は 何思い 巡る東の空から 明日が降って来る西の海の底へ 昨日が沈むいつまで続ければ こんな旅は終わるのか噤みながら逐(お)われゆく 悲しみは終わる 東の大地から 明日が降って来る西の町の底へ 昨日が沈むいつまで続ければ こんな旅は終わるのか噤みながら逐われゆく 悲しみは終わる はるかな昔から 何が変わったかなはるかな未来には 何が変わるかないつまで…

  • 心月 – 中島みゆき

    心月(つき)を捜してる 夜(よ)もすがら遮られながら 夜もすがら心月を捜してる 夜もすがら欺かれながら 夜もすがら空を覆う雲のせい いいえたぶんそこには無い心月を捜してる 夜もすがら 心月を捜してる 昼ひなか目も眩みながら 昼ひなか降り注ぐ威光(ひかり)の中 いいえたぶんそこにも無い降り注ぐ威風(かぜ)の中 いいえたぶんそこにも無い心月を捜してる 昼ひなか目も眩みながら 昼ひなか 心月を捜してる …

  • 乱世 – 中島みゆき

    僕は乱世に生まれ 乱世に暮らすずっと前からそうだった僕は乱世に生まれ 乱世に育つ驚くほどのことじゃない 逆らってた 苛立ってた 歯向かってた とんがってた怖いのを隠してたぶつかってた 抗ってた 噛みついてた 楯ついてた逃げ道に背を向けた争い方しか載っていない教科書を持ってどうなりたかったんだっけと 首をひねる今僕は乱世に生まれ 乱世に暮らすずっと前からそうだった僕は乱世に生まれ 乱世に育つ驚くほど…

  • 心音 – 中島みゆき

    空は信じられるか 風は信じられるか味方だろうか悪意だろうか 言葉を呑んだあれは幻の空 あれは幻の町ひりつく日々も眩しい日々も 閉じ込める夜誰も触れない 誰も問わない 時は進まないでも聞こえてしまったんだ 僕の中の心音綺麗で醜い嘘たちを 僕は此処で抱き留めながら僕は本当の僕へと 祈りのように叫ぶだろう未来へ 未来へ 未来へ 君だけで行け 窓は窓にすぎない 此処に雪は降らない雪色の絵の中の出来事 冷た…

  • 童話 – 中島みゆき

    美しい物語 読み聞かせていた良い夢を見なさいと 寝かしつけていたおはなしのお終いは どれも必ず報われた幸せで 満ちあふれていた目を醒まして見るのは 片付かない結末どうして 善い人が まだ泣いているの童話は童話 世界は世界子供たちに何んと言えばいいのだろうか 勇ましい物語 悪者は倒されて囚われの人々は 救われて いだき合い穏やかな物語 長い旅路の果てたどり着くふるさとで 青い鳥が待っている目を醒まし…

  • 夢の京 – 中島みゆき

    うなされ続けていたね 眠りの外の国では終わりの見えない悲しみごとが 空に横たわっていた眠れる歌を聴かせて 鎮かな花を咲かせて数えきれない涙の上に 粉雪を降らせて心を持つのは人だけ いいえそれは思い上がり鳥は歌う 虫は歌う なのに人は なのに人は樹々は歌う 水は歌う なのに人は なのに人は悲しみを晴らすために 新しく誰を悲しませるの夢の京(みやこ)へ帰ろう もう無い国へ帰ろう時は戻らない 夢は戻れる…

  • 天女の話 – 中島みゆき

    あんた笑いもんにされておるんやで ええのんかってえみちゃんは涙こぼし鼻水こぼして いきどおるあんたあんな嘘いわせて ほっといてええのんかってえみちゃんのパフェはとうに でろでろに溶けてしまった逢いに来てよかったわ 仕事とんだけど心斎橋まで 1時間 低い屋根しかないけれどねえ 夕焼けが綺麗だね人間なんて小さいね 小さいね あんたのは結局のとこ ええかっこしいなんやってえみちゃんは掛けた椅子ごと にじ…

  • 十年 – 中島みゆき

    凍えた並木の下 あなたに初めて会ったあなたをあきれさせる生意気な口をきいた嵐に折られかけた あなたの日々を見てた私はいたわりもせず 薄情に離れていたわざとよ 心の中で波が騒いでたからわざとよ あなたの傍にいるべき人を知ってたから十年は長い月日か 十年は短い日々か恋する者には 無きにひとしい想いだけが ただ咲いていた 並木は枝を伸ばし 緑のトンネルになった二人でいると聞いてたあなたに 再び出会った本…

  • 島より – 中島みゆき

    私たちが暮らした あの窓からは見えなかった星の渦が 騒いでいます浴びるような星の中 心細さも戻りたさも涙も 溶けてゆきます私じゃなかっただけのことね初めての国で 習わしを覚えたぶん忙しく生きてゆけるでしょう島よりとだけしか明かさぬ文はそれゆえ明かすでしょう 心の綾を なるようになるものね 恋人たちは遠回りしてもなお 宿命ならば私じゃなかっただけのことね島では誰でも 子供に戻れる夢を持つ前の 子供に…

  • 有謬の者共 – 中島みゆき

    いくつの夜を 集めても足りないここは隠れ家 息をひそめてる幻の火を 連ねても足りないここは物陰 嘘たちの棲み処隠れて隠れて隠れ続けた逃れて逃れて逃れ続けた真っ新で 真っ直ぐで 真っ暗な空完璧で 潔癖で 鉄壁な空嘘が解れる夜間違えてもニンゲン 間違えてもニンゲン間違うのがニンゲン 誰かがまだニンゲン間違えてもニンゲン 間違えてもニンゲン間違うのがニンゲン あんたがまだニンゲン 時が縺れる 夜へ傾れ込…

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