林部智史
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見えないね – 林部智史
傷付いてる あの街の隅々まで純白の雪が降り積もる頃私は日々 営みを続けている朝早い電車に揺られながら 時は心 置き去りにしたまま未来を向いて進んでく振り返れば 記憶彩るはじけそうな 友の笑顔 空の色 あの日あの時 あの場所には消えない輝きがあった大事な物ほど すぐには目には見えないね 手に入れたら もうひとつ欲しくなってきりがない 人はそんな生き物 でも手放して 生まれた隙間には優しい色の花が咲く…
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追伸 – 林部智史
電話ひとつが 遠いふるさと花は咲いていますか風の坂道 背中を向けて夢を見てた この街 だけど気づけば 土の匂いが思い出に あります置いてきたのは 探してたもの心だけが 知ってた お下げ髪 紅い鼻緒のあの娘の声 いまもひつじ雲 追いかけながら見上げた空 いまも 庭の柿の木 猫と縁側いつか巣立つ 雛鳥川のせせらぎ 森の木洩れ日高く跳ねた 靴音 きっとほんとは どんな道でも帰り道 なのですさみしいときは…
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小さい男 – 林部智史
然したることのない 暮らしの憂さ故か意味目的もない 命の虚しさか僕の心を 底なし沼の深い孤独が 覆いつぶす助けてくれと 叫びあげたい寂しさに 寂しさに 体が凍る死さえ勧める 酷(むご)い孤独が僕の心に 住み着いていた いつかそんな僕に 出逢いが訪れた美しい姿で 美しい心の君という人 僕はすっかり君中毒に 身を染め上げたようやく僕の 命動いて生きてる意味も そこに生まれた僕は決めたよ 一生かけて君の…
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遥か – 林部智史
遥か遥か高く遥か遥か遠く 「見てほしい」と願うのは認めて欲しいと思うから認められたら力に自信につながるから ひとめにつかない時も自信が光ろうとする何があっても大丈夫胸を張って生きられる 遥か遥か高く登ってこいと言いながら同じ目線におりてきて広い世界をみせてくれた 「聞いてほしい」と願うのは自慢したい訳じゃない聞いてくれたあなたと“つながり”がほしいから 静けさが闇になって心覆うその時も何があっても…
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祈り – 林部智史
人の弱さ 欲の深さ時に人を 殺める戦勝ち誇る 兵士の顔忽然と 無辜の心 奪う戦場 今この日も すさぶ心諍い事 絶えぬ世界尊厳を 持てぬ命このままで いいはずない さあ祈りましょう 人の世が 平穏なれ人々が 平安なれ人が人 侵さぬ世界築くこと 祈りましょう たとえこの身 かそけくともその念じの 強く広く輪を広げ いつの日にか風となり 世を動かす 力となることを いつの日か 風となり 力となることを …
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時が過ぎるまで – 林部智史
今は抱けないよ…抱きしめられない君の横顔 淋しそうに誰をも遠ざけているから入り込めないよ…愛しているけど車に照らされた後ろ姿消えるまで この場所で見送るよわかって欲しい 無邪気に遊んだ 夏が終わりを告げる恋に夢中になる 炎くすぶる蓋を開けた心に秋風吹いて少しの疲れが 二人を変える 寄り添うほど 言葉少なく見つめるほど 悲しい大切なのはもう一度素直になれるまで 時が過ぎること 今は抱けないよ…抱きし…
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忘却のタンゴ – 林部智史
君を忘れられるなら 何を捨ててもいいさどこまでもついてくる あの面影 君の声 君の言葉 君の仕草 ぬくもりもう愛していないよと 心で何度叫んでも 僕の部屋 窓の外まで 何をみても思い出す気付いたら抱きしめている ここにいないはずの君を こんなに好きだなんて あの時気づいていればさよならの理由なんて 今はもう覚えていない恋は夢か 御伽噺目の前から消えてくれ 愛に形はないけれど 思い出は絵の様に目の中…
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ひまわり – 林部智史
でも、 もしも心残りが ひとつあるとしたら強く強く もう一度あなたを抱き締めたい 愛が不滅だと知った日私はぐっすり眠れた夢の中で振り向いてあなたが走ってくる百万本のひまわりより笑顔が輝いていた 切れない絆が ただ嬉しくて結んだ縁が ただ尊くて たったひとつ望みが今 叶うとしたらそっとそっと 何度でも額に口づけしたい 愛の永遠を信じて窓辺の小鳥が囁くふと気付けば青空が何処までも広がって百万本のひまわ…
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あなたのペースで – 林部智史
思い描いたユートピアはいつも違う世界線幸せはいつも人の庭“今”だって いつかの幸せ こうして笑い泣けること選べることがある 充分だよ 明日を迎え続けてく時に昨日を持ち越しても才能が羨ましくても打ちひしがれず 比べずに生きてるだけでいいからあなたのペースで 夢が無いのも悪くはない前を向けない日もある戦えない日 立てない日も抗えない日も知っている だから優しくなれる優しくだけでも ありたい 毎日輝けな…
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花水仙 – 林部智史
鉢植えの水仙を 買ったのはお風呂がえりの ゆうぐれ時ですこのゆかしさが おまえに似てるとあなたに言われて 嬉しかった新妻みたいに エプロンかけてあなたを世話した 愛の明け暮れ一年のみじかいくらしを懐しみ水をあげてる 私です 花売りのリヤカーが 露地うらに春を今年も はこんで来ましたこのアパートを 出る気はしませんあなたが戻って くるかも知れないお揃いで買った コーヒーカップ戸棚にひとつ ふせてあり…