鬱瀬美浦(芝原チヤコ)
砂の記憶 – 鬱瀬美浦(芝原チヤコ)
風のように通りすぎる
旅人の群れにまぎれ
差しのべた指に触れる
愛も希望も渇いた夢さえも
星に舞う彼の髪は
夜の空につながれて
果てしなく時を刻む
振り子のように
ゆらりゆられ そよぐ
眠ることさえ忘れてしまえる程
長い時に抱かれ
風だけを見つめ
彷徨える瞳には
ユラメクキセツのかけら残して
すり抜ける夢の少女
飲み干した夜の雫
蘇る砂の記憶
微睡の刹那に溺れながら
もう心さえ何処へも戻れぬまま
永遠をさすらう
時の無い国で
頬つたう ためいきを
祈るように遠く空に放つ