グレープ
-
春風駘蕩 – グレープ
悲しみばかりが続くもんじゃない喜びだって永遠じゃないでしょう酷い雨のあと日差しが戻っても小雨が残るなんてよくあること絶望に胸を噛まれ痛みに心は折れでも諦めない嵐は必ず去る雨は熄(や)んだ風は絶えた冬は去った春は闌(た)けた胸の奥にしまった笑顔を春風に飛ばしましょう悲しみばかりが続くもんじゃない 苦しみばかりが続くもんじゃない禍福はあざなえる縄のごとくしあわせふしあわせ誰が決めるんでしょうしあわせな…
-
ゲシュタルト崩壊 – グレープ
正しい文字をじっと見ていたら正しくないように見えてくる正しい人をじっと見ていたら正しくないように見えてくる正しいか間違いかを誰が決めるんだろう世の中が決めるのなら世の中って誰だろうでも君の笑顔はじっと見ていてもしあわせ 読まなければ文字で傷つかない耳を塞げば言葉で傷つかない目をつぶれば汚れたものたちも見なくて済むんだけどね生き甲斐も そしてしあわせも私が決めることでしょう何処までも きっと壊れない…
-
花会式 – グレープ
西ノ京まで歩きましたねたどり着く東の塔に 朧(おぼろ)三日月あなたの言葉憶えています情のない知恵なんて朽ちた心と同じ今宵薬師寺の花会式あなたの里も春になりましたもう一度会いたいあなたの笑顔に 梅桃桜椿百合藤杜若山吹牡丹そして菊の花練行衆の声明遥か全ての病癒したまえ罪を許したまえ今宵薬師寺の花会式明日は私の鬼を追いましょうもう一度聞きたいあなたの声を 人は誰でも間違うもので過ちを償うために未来はある…
-
春を待たず君を離れ – グレープ
春を待たず君を離れ駅の片隅に恋を埋め自分に負けた哀しい僕の貌(かお)が夜汽車の窓に映る 小さな瓶のウィスキィキャップに注いでは呷り思いついただけの歌なんか呟くように歌う明日になれば明日になれば明日になどいっそならなければいい春を待たず君を離れ駅の雑踏に恋を埋め追われるように故郷に帰る夜汽車が河を渡る 次の駅を過ぎたら今までの僕を棄てよう思いついただけの夢なんて君には届かない明日になれば明日になれば…
-
天人菊 – グレープ
母の好きだった歌がふとラジオからこぼれている記憶の湖(うみ)の畔で母が小声で歌ってる何故こんなに切ない歌を彼女は愛したんだろう世の中は一所懸命に生きようとすればするほどに辻褄の合わないように出来ているでももしも寄り添えるならば悲しみより希望のほうがずっと良いと思う 母が歌ってる「それでも未来は私のもの」 母の気に入りの花が夏の終わりに咲きそろった天人菊(ガイラルディア)の小さな花何故こんなにも目立…
-
うたづくり – グレープ
ふと傷ついて 失くした心あなたが拾って護ってくれた諦めていた失くした夢の続きをあなたが見ていてくれた生まれたときは誰も一人去りゆくときも皆一人そんな狭間であなたに恋をしていのちの温もり知りましたあの約束を守るために今日もこうして うたづくり ふと傷ついて 失くした言葉あなたが忘れず護ってくれた一人孤独に歩いた道もあなたが隣りを歩いてくれた悲しいときいつでも二人嬉しいときもきっと二人そんなあなたを失…
-
夢の名前 – グレープ
重いため息繰り返しては別れの言葉を探しているねあの時だとかもしかしてとか言い出したらキリが無い去りゆくとき何も要らない涙も思い出も未練も言い訳も叫ぶように「ありがとう」なんて一番つらい言葉でしょう藤棚の花の香りを忘れないと思う青空に真白な飛行機雲ただひとすじ お互い同じ夢の名前を追いかけたそれは真実のこと生き甲斐だとか口に出したら全てが言い訳になるしあわせになってくださいなんて恥ずかしくてとても言…
-
ほおずき – グレープ
いくつかの水たまりを残して梅雨が駆け抜けてしまえばしめった風の背中越しにきみの好きな夏が来ます あの日きみにせがまれてでかけた小さなお祭り綿菓子の味 アセチレンの光きみは赤いほおずきを買った ため息でまわしたひとつのかざぐるまとまらず にとまらずにまわれと二人祈っていたのに きみの下駄の鼻緒が切れたひとごみにまかれて切れた僕の肩にすがり うつむいたきみはおびえるように 涙をこぼした 走馬灯に照らさ…
-
追伸 – グレープ
撫子の花が咲きました芙蓉の花は枯れたけれどあなたがとても無口になった秋にこわくて私聞けませんでしたあなたの指の白い包帯上手に巻いてくれたのは誰でしょう 風に頼んでも無駄ですか振り返るのは嫌いですかどこにもある様な事ですか私髪を切りました たとえば今日のあなたのこと他の人と楽しそうに笑ってたあなたの声が眩しくて耳をふさぎました下手なくせにあなたの為に編みかけた白いベストやはり夢でしたほどき始めましょ…
-
朝刊 – グレープ
きみは早起きしたのがさも得意そうにねぼけまなこの僕を朝食に追いたてねエまた巨人が負けたってさって高田の背番号も知らないくせに どうでも良いけどトーストが焦げているからね僕は君に新聞通になって欲しくない新しいエプロンも可愛いけどねまたあわてて焦げを作るんだろう 前に親父が来たときも僕の好物のカラスミを手土産にとくれたのにわざわざまた煮て駄目にしてごめんなさいっていい乍ら一番笑いこけたのは君 まったく…