鳥羽一郎
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おふくろ月夜 – 鳥羽一郎
苦労を笑顔で 引き受けて袂(たもと)にかくして 生きたひと姐(あね)さんかぶりの 手ぬぐいに沁みた涙よ やさしさよ細い眉月 かかる夜は思い出すんだ おふくろを あんなにちいさな 躰(からだ)でも海よりおおきな 親ごころがんこな親父の うしろから俺をかばって くれた人空を見上げりゃ 泣ける夜詫びているのさ おふくろに 紅(べに)さえささずに 咲き切った名もない花の 美しさお前が達者で あればいい親の…
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昭和のおとこ – 鳥羽一郎
野暮でいいのさ 人生なんて名もない雑草(くさ)にも 花は咲く時代(とき)の流れに 乗り切れなくて沈んで飲んだ 苦い水それも心の 糧として昔かたぎの 昔かたぎの昭和のおとこで 生きてゆく 人生(たび)の終わりに 逢いたい人を想えば今でも 痛む胸泣いてくれるな 男はいつも言わずにおいた ことばかり遠く祈ろう 幸せを昔かたぎの 昔かたぎの昭和のおとこが ここにいる 俺でよければ 力になるぜ人情すたれば …
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朋輩よ – 鳥羽一郎
お天道様(てんとうさま)みたいな 柄ではないがせめてこの世の 片隅(かたすみ)を照らす男でありたいと お前が笑う笑う数だけ 酒が空く男でいようぜ 死ぬまで男なあ 朋輩よ 黙って泣いてこらえた 未練な恋も逢って詫びたい あの女(ひと)もどれも俺(おい)らの人生と 俺(おい)らが笑う笑う背中に 酒が舞う男でいようぜ まだまだ男なあ 朋輩よ 雨風吹き荒れても 前だけ向いて越えた時代を 振りかえりゃ華も我…
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長谷寺の雨 – 鳥羽一郎
しぐれの雨に 打たれる牡丹遅咲きを 恥じらうか三百と九十九段の 登廊(のぼりろう)忘れよう それがいいんだ それが好きでいるからこそ 終わらせる法螺貝(ほらがい)が 胸をえぐるよ あの日のことは 運命(うんめい)だったこんなにも 苦しむか舞台からはるか彼方は 墨流し忘れよう それがいいんだ それが夢にするしかない 二人だよ気の弱さ 笑いとばせよ しぐれの雨が 屋根から落ちるトレンチに 沁みこむかあ…
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一膳の箸 – 鳥羽一郎
やっと叶った ふたりの夢は紺ののれんの 小料理屋“でくのぼう”だと 怒鳴られながら腕に仕込んだ 百の味棒は棒でも おまえとならばおんなじ長さで まっすぐで今日からふたりで 一膳の 一膳の箸 奥に小上がり テーブルひとつ六人座れる カウンターネタの仕込みは 港の仲間いつもいいもの 届きます今は苦労が 楽しみでして箸にも棒にも なれないが女房のおかげで 一膳の 一膳の箸 杉の小枝で こさえた箸は山の香…
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鳥羽の海女 – 鳥羽一郎
おやじ操る 小舟から浮き樽かかえて 鳥羽の海女水面(みなも)ひと蹴り さかさまに青き潮(うしお)の 底めざすドーマン・セーマン お守り下さい白き足裏 鳥羽の海女 岩を伝って まだ潜る真一文字(まいちもんじ)の 命綱アワビはがして ウニ拾い真珠の玉の 息を吐くドーマン・セーマン お守り下さいもうひとかせぎ 鳥羽の海女 浜にあがれば 母の顔東京のせがれに 小包みをアジの干物の その下に小瓶に詰めた 鳥…
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哀傷歌 – 鳥羽一郎
ひとつどうぞと そそぐ手に過ぎた昔の 影がある傷を隠さぬ 薄化粧わかっているさ 俺しかいない優しい夜を やれるのは 昼と夜とが あるように恋に表と 裏がある未練なみだは 今日かぎりわかっているさ 俺しかいない孤独のつらさ 分けるのは 追えば逃げてく ものばかり夢の名残(なご)りが やるせない逃げちゃいけない つらくてもわかっているさ 俺しかいない明日(あした)をともに 歩くのは 人気の新着歌詞 男…
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風を起こせ – 鳥羽一郎
風が吹くのを 当てにして人生のんびり 寝て待つな今日でおさらば 風待ち港天は苦労に 味方する船だせ 漕ぎだせ 走りだせ風は自分で 起こすもの 惚れた女を 遠くから眺めるだけでは 甲斐がない網を打たなきゃ 魚は獲(と)れぬ嵐 覚悟で ぶつかれよ船だせ 漕ぎだせ 走りだせ愛は激しく 奪うもの 目先の波を 追いかけて船酔いしている 奴ばかりはるか未来に 心を向けりゃ見ろよ希望の 陽が昇る船だせ 漕ぎだせ…
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つれづれの酒 – 鳥羽一郎
未練が飲ませる 酒がある思い出捨てたい 酒もある惚れた女の ためだとか身を引くバカが いたっていいだろう憂き世 つれづれ ひとり酒淋しいね… 男って 酒では洗えぬ 傷がある月日じゃ消せない 傷もある風が暖簾を かき分けて面影何度 運んでくるのやら憂き世 つれづれ ひとり酒淋しいね… 男って 遠くで見守る 恋がある死ぬまで忘れぬ 恋もある俺の心も 知らないで恨んでくれりゃ それでもいいだろう憂き世 …
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されど人生 – 鳥羽一郎
酔い醒(ざ)め水の 冷たさが五臓六腑に 沁みわたる旧友(とも)を送った 冬の夜もう一度ひとりで 飲み直そうかされど人生…おまえの分まで 生きるさと写真につぶやく 別離(わかれ)の酒だ 何年ぶりで 逢った女(ひと)時が昔へ 巻き戻る胸に切ない 初恋は遠くに流れて 消えゆく星かされど人生…彼女(あのこ)をおまえと 張り合ったあの日が青春 思い出酒だ 倖せだった おまえには悔やむことなど ないだろうな俺…