錦戸亮

キッチン – 錦戸亮

得意じゃない料理の腕を
磨こうと健気な君が過ごす
キッチンが今日も騒がしい

「覗かないで」「期待しないで」
後ろからこっそりお尻でも
触りたくなってくる

ちゃんとレシピは見てるかな?
目分量じゃないかな?
火傷にも注意して
ほら冷めない内に盛り付けて

出来上がりはいつも
似たような見た目だとしても
何でかな不思議
おかわりの数も多くなる
少ししょっぱくても
肝心な何かが欠けていても
目の前の君とのセットで
そそってくるんだ
いろんな欲が

お世辞じゃない君の成長を
隣で眺められる特権に
期限なんてあるのかな

口にしないでよく噛みしめよう
飲み込んだ思いを消化して
うまく伝えられたらな

そうだレシピ通りじゃない
展開にも備えとこう
喧嘩にも注意して
ほら冷めないうちに取り戻そう

仲直りはいつも
君から仕掛けてくれるから
その度に感じる
器の大きさの違い
歳の差だとか育った
環境も関係はない
今ここにある材料だけで
なんとかしなきゃな
何が出来るかな

君が作ってくれるご馳走を
カテゴライズするのはナンセンス
口の中から胸の奥まで
満たしてくれるものはなに?
灰汁が強めの二人だから
じっくり時間かけていこう
洗い物なら任せて

出来上がりがいつも
似たような見た目に見えたのは
ご馳走の向こうの
君にただ見惚れてただけだ
この先に出会う
初めての食感も味も
味わっていたいな
お皿の向こうの君とセットで
少ししょっぱい思い出も
甘酸っぱい幸せと
あえて君だけの味付けで
魔法にかけて
全部平らげよう

得意じゃない料理の腕を
磨こうと健気な君が過ごす
キッチンが今日も騒がしい
その音が愛おしい

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