遠藤賢司

ラーメンライスで乾杯 – 遠藤賢司

もしかしたらと思ったら やっぱり君じゃないか
よく来てくれたね こんな暑い日に
あいにく女房は娘と ちょっと町まで 留守だけど
そんな所に立ってないで あがってくれよ

ところで君の奥さんや 太郎くんは元気かい!
エッ!また男の子が そうかい そいつはオメデトウ!
勿論我が家の女房も おてんば娘もタマやポチも
み~んな元気で何よりだ

そうそう君の短編小説 『オンボロアパートの春夏秋冬』
早速読ませてもらったよ 僕達が一緒に住んでた
あの「富士見ヶ丘荘」のことだね 僕らしいのもウロチョロと
懐かしいやら 照れくさいやら
でもお世辞じゃなしに とても よかったよ

僕は相変わらず 絵筆片手に慣れない畑仕事
でも御覧のとおり 女房のおかげで何とかやりくりだ
あ~ その絵は『日向ぼっこ』っていうんだ エッ本当かい うれしいなぁ
さあさ 遠慮するなよもう一杯 冷たいビールをもう一杯

ところであの日のことだけど 初めて本になった君の小説
自分の事などすっかり 棚上げしたまま僕は
あらさがしばかりしてしまったね 僕は実に嫌な奴
君に先を越されたようで 本当はとても悔しかっただけなのさ

御免ナ君をとっても 傷付けたね
本当は何度も何度も あやまりに行こうと思ったんだ
でもまた君に先を 越されてしまったね
やっぱり君にはアハハ かなわないや

ああいいよいいよそんな事 あれこそまさに自業自得
今でも時々ふいっと 左の頬は疼くのさ
それよりお腹が空いたろう ソウダ 「オンボロアパート」と言えば
残りの御飯に インスタントラーメン
そうさ今日のお昼はラーメンライスだぁ

勿論今夜は 泊まってゆけよ 3年が分がとこ
ドーンと朝まで飲みあかそうぜ
大丈夫だよ今度 あやまりに行くのは
俺の番だと決まってる ソウまかせとけい
さてそれでは!我らがしっかり者の女房や太郎君や花子に
そして俺達の仕事におっとついでにタマやポチにも乾杯だ
そしてきのうも今日もあさっても ず~と変わらぬ
お前と俺 そう…お前と俺の友情にラーメンライスで…乾杯!

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