細川俊之

れんが色の酒場 – 細川俊之

この世にバラいろの朝が来るとは
とっても思えはしないのに
どうして二人は生きているのだろう
あきらめた人生には
優しい心だけが似合うだろう
何も言わずにぼくをみつめて
ぼくもあなたをみつめているから
今夜も二人だけ朝が来るまで
ルルルル れんが色の酒場

昔はぼくもおしゃべりだった
多分あなたも
そうだったろう……
人生をやりすごすたびに
人は静かになって行く

だれにも若い日があると言うけど
とっくにいのちは燃えつきて
どうして二人は生きているのだろう
そんなことはなし乍ら
今夜も酒をのんでしまう二人
何も言わずにぼくをみつめて
ぼくもあなたをみつめているから
小雨の音がする夜のまぼろし
ルルルル れんが色の酒場

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