秋岡秀治

  • 男の未練 – 秋岡秀治

    胸のすき間に 面影揺れて飲んでなだめる 恋の炎(ひ)よ酒よ 酒よわかるか 男の未練身を引くことしか できない俺を呼んでくれるな 路地の雨 遠く旅路に 逃れてみてもいのち焦がれる 恋の炎よどこに どこに捨てよか 男の未練一緒に逃げてと すがった腕をほどくつらさを 誰が知る 知っていたのに 叶わぬ夢となんで消せない 恋の炎よ名前 名前つぶやく 男の未練死ぬほど惚れてた あいつの涙思い出させる 路地の雨…

  • いばら道 – 秋岡秀治

    咲かずじまいの 夢を捨てればあとからおまえが 拾って歩くなにを好んで この俺とさだめ重ねる いばら道その手に乗せたい 倖せひとつ いつかあなたの 時代(とき)が来るわと励ますおまえの その目に負けるよくぞここまで ついて来た時につまずく いばら道転ぶも起きるも 二人は一緒 泣いていたのか 俺に隠れて気づかぬふりして 背中を抱けば向ける笑顔に また惚れるあかり探して いばら道苦労の分だけ 花咲く日ま…

  • 千里の酒 – 秋岡秀治

    いつか一緒に おまえとふたり夫婦(めおと)になって 飲める日が信じていれば きっとくるきっとくる きっとくるその日を夢に がまんの酒はおまえも同じ 千里の酒さ ずっとやまない 雨などないさ虹さえかかる 晴れた日がふたりの空に きっとくるきっとくる きっとくるその日のために 涙をためて今夜もひとり 千里の酒さ 誰に遠慮も しなくていいさひなたの道を ふたりして歩けるときが きっとくるきっとくる きっ…

  • 俺はやっぱり演歌だぜ – 秋岡秀治

    照れて口には 出せないけれど夫婦春秋(めおとしゅんじゅう) ありがたさともに白髪の 背中に向かい胸でつぶやく ありがとう演歌だぜ 演歌だぜ俺はやっぱり 演歌だぜ 覚悟している つもりでいたが娘持つ親 さびしさよ妻に何度も たしなめられてやっとひとこと おめでとう演歌だぜ 演歌だぜ俺はやっぱり 演歌だぜ 肩を組むのは 柄ではないが旧(ふる)い友情 変わりなしともに過ごした 学び舎(や)さえも今はない…

  • なぁ女将 – 秋岡秀治

    洒落(しゃれ)た肴(さかな)は なくていい二合徳利で ぐいと呑(や)る路地裏づたいに 水仙の花めげずに今年も 咲いたとかちいさな酒場(みせ)の ちいさな話沁みる 沁みるぜ…… なぁ女将(おかみ) 苦労こぼして 何になる酒のしずくに 流し込めほのかな香りの 水仙の花女将に似てると 言い出せず口説(くど)きの下手な 男がひとりこれで いいんだ…… なぁ女将 みぞれまじりの この雨も春が訪れ 止むだろう…

  • 笹小舟 – 秋岡秀治

    白いうなじを かたむけて風の行方を みつめる みつめるおまえ時の流れに 身を浮かべふたり漂う 笹小舟この手離すな もがけば沈む痩せた背中は 俺の罪 肌を寄せ合い 腕の中悪い夢など 見るなよ 見るんじゃないぜ曲がりくねった 浮世川人の澱(よど)んだ 水面(みなも)行くせめて心は 埃(ほこり)を払い空を仰げば 笑う月 死んだ覚悟で 生きてゆく惚れていりゃこそ 命を 命をかけた過ぎた過去(むかし)を 振…

  • 命 道づれ – 秋岡秀治

    おまえの小さな 肩先そっと抱けば涙で すがりつく待っていたのか この俺を潤(うる)む瞳の いじらしさもう二度と 離さない命 道づれ おまえと俺は 窓辺に咲いてる 竜胆(りんどう)の花どこかおまえに 似てるよでばかな男の わがままを何も言わずに 許すやつもう二度と 泣かさない命 道づれ おまえと生きる おまえの優しさ 一途な心回り道して 気がついた詫びる思いで 目を閉じりゃ髪の匂いの なつかしさもう…

  • 雪寺 – 秋岡秀治

    雪寺は 山の懐(ふところ)閑(しず)やかに 眠る寺訪れたのは 赤い柿の実木守(きまも)りひとつ 残る冬 根雪(ねゆき)のような 悲しみに心凍らせ ただひとりせめて一日 泣きたくてただ胸の内 聞いて欲しくって… 雪寺は おんな心を愛おしく 包む寺両の手合わせ 瞼(まぶた)閉じればあふれる涙 恋懺悔(こいざんげ) 本当の愛に 気づかずにあなた恨んで 傷つけた馬鹿なおんなを さらけ出しただ胸の内 詫(わ…

  • 逢いたい夜 – 秋岡秀治

    理由(わけ)も言わず 雨の中にあなたひとり 残して来た 遠いあの日思えばせつないいつも私 あなたに甘えいつも私 わがままばかり悔やんでも あなたに二度と二度と二度と 戻れない雨のしずく 窓に揺れて あなたに逢いたい 他(ほか)の人と 恋をしても胸の奥に あなたがいた いつの時もこぼれるため息ばかね私 大事な人とばかね私 気付きもせずに許してと あなたに誰か誰か誰か 伝えてよ滲む涙 指で拭けば あな…

  • 男の名刺 – 秋岡秀治

    男の名刺の 裏側に涙と汗が 沁みている長い付き合い お互いに愚痴をこぼした 夜もある真面目が取り柄の おまえと俺さ酒酌み交わす 裏通り 小さな名刺の 一枚に男の夢が 詰(つ)まってる仕事ひとすじ 働いて家族守って 生きて来た似た者同志の おまえと俺さ笑って泣いた 年月よ 男の名刺は いつだって肩書きよりも 心意気時の流れが 変わろうと苦労承知で 前に出るいくつになっても おまえと俺さよろしく頼むよ…

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