男石宜隆

  • 紅花の恋 – 男石宜隆

    最上のほとりに 乱れ咲く黄色いアザミか 紅の群れどこに咲いても 隠れても人に棘さす 恋だからつらい別れを 決めました末摘(すえつむ)花です 紅花哀し 私があなたの 庭に咲く花なら近くに 咲けるのに好きになるのが 罪ならば想うことさえ 罪ならば花は散るしか ないのです末摘花です 紅花ひとり 「あなたを嫌いに なりました」最後の嘘です お別れのたった一度の この嘘をもしも言わずに 済むのなら朝に花びら…

  • 秋霖 – 男石宜隆

    金色の 銀杏並木綺麗だねって あなたは言った秋がまた 来るたびにいないあなたを 想っている霖々と霖々と 雨が降る胸を濡らして 降りしきる逢いたくて 逢いたくて想い出に 出来なくて手離した その指を今もまだ 探してる 落ちてゆく 夕日見つめ静かにそっと あなたは泣いたその訳を 聞いたけど何も答えず 笑っていた霖々と霖々と 雨が降る今日も止まずに 降りしきるいつまでも いつまでも変わらない 信じてた動…

  • 追憶の街 – 男石宜隆

    駅に降りたら 改札を抜け左に曲がれば 想い出の道角の花屋も あの日のまま今もあなたが 立っていそうで愛は優しくて 愛は重たくて若さは身勝手で 恐さ知らずで言えなかった 言葉が風に…通り過ぎてゆく 二人暮らした アパートの窓見上げて小さく ため息をつく坂の途中の 馴染みの店いつもあなたを 待たせていたわ愛は優しくて 愛はバラ色で二人は一緒だと 信じられてた壊したのは 私ね馬鹿ね…今じゃ遅いけど 愛は…

  • コースター – 男石宜隆

    あの日は一人でいるのがみじめで寒くて やり切れなくてアクアマリンの 電飾に誘われフラリと ドアを開けたどこの店にもよくある 丸くて白いコースターよく見りゃ一杯どうかと 口説き文句の青い文字それがアンタとの 始まりだったわ淋しい男と 女の始まり恋かと聞かれりゃ 違うと言うけどそれでも多分 ホントはアタシ…愛してた 桜が三回散っても土曜の夜には 二人で飲んだ名前一つも 知らないし男と女で それがすべて…

  • 願・一条戻り橋 – 男石宜隆

    ああ あなたの手の 温もりが恋しいいつも隣にいた 優しいあなたああ 突然別れが くるなんてそれは 信じられない ことでした悲しみを閉じ込めて 今を生きてるけど時にどうしようもなく 涙がとまらない祈り 一条戻り橋 夢でもかまわない願い 一条戻り橋 あなたに逢いたい ああ あなたのあの 愛(いつく)しむ笑顔は今も心にある わたしの支えああ 永遠(えいえん)に続くと 疑わずとても しあわせ過ぎた 日々で…

  • 北の螢 – 男石宜隆

    山が泣く 風が泣く少し遅れて 雪が泣く女 いつ泣く 灯影(ほかげ)が揺れて白い躰(からだ)がとける頃 もしも 私が死んだなら胸の乳房をつき破り赤い螢が翔(と)ぶでしょう ホーホー 螢 翔んで行(ゆ)け恋しい男の 胸へ行けホーホー 螢 翔んで行け怨(うら)みを忘れて 燃えて行け 雪が舞う 鳥が舞う一つはぐれて 夢が舞う女 いつ舞う 思いをとげて赤いいのちがつきる時 たとえ 遠くにはなれても肌の匂いを…

  • 六つの花 – 男石宜隆

    夜の闇から 音もなくシンシンシンシン降り積もる 六つの花言われなくても わかりますこれが最後の 逢瀬だと白い白い白い雪が 格子窓に落ちる生木裂くよな 別れをあなた針の音さえ 憎らしいいっそ ひとひらの雪になりこの命 この命 消えるまで… 紅い蛇の目を 染めるよにハラハラハラハラ舞い落ちる 六つの花知っていました 見送れば消した未練が 増すことを白い白い白い雪が 寒い胸に落ちる追ってゆけない 愛しい…

  • 浜のれん – 男石宜隆

    フワ フワ フワリと 雪虫飛べば浜に二度目の 冬が来る 冬が来るやっと開(ひら)いた 店なのに私残して どこ行った北の 港の 浜のれん今日も一人で 赤提灯(ひ)を灯(とも)す ヒュル ヒュル ヒュルリと 海風吹いて誰か噂を 連れて来い 連れて来い雨が降る日は 側(そば)にいて風邪を引くなと 抱き寄せた酔えば 恋しい 浜のれん苦いお酒を また煽(あお)る ポツ ポツ ポツリと カモメが言うのあんな情…

  • 那智の恋滝 – 男石宜隆

    この世にあなたが いないのならば生きる意味など ないのです白い野菊の 花嫁衣装一人深山(みやま)へ 入ります熊野 龍神 小森谷(こもりだに)身丈(みたけ)に合わぬ恋でも あなた…闇(やみ)も静寂(しじま)も 蛇(じゃ)の道も恐れはしません お万のことを夢であなたが 待つのなら お側(そば)にあなたが いないのならば見せるお方も ないのです残る白粉(おしろい) 川面(かわも)に流し紅も一緒に 溶かし…

  • ヤバイ… – 男石宜隆

    見え透いた 優しい嘘のなぐさめは やめてくれ黙って店から 出ていけばいい 好きだった 薄めのルージュ重そうな くちびるに別れの言葉が こぼれて消える ヤバイ ヤバイバイバイ… 嘘だろうヤバイ ヤバイバイバイ… 泣きそうさ外は雨 傘もない アァ… 淋しいと こぼした涙気づかない フリをした最初も最後も 悪いのは俺 気の抜けた ビールの泡がひとつだけ 揺らめいて愚かな未練を 冷たく笑う ヤバイ ヤバイ…

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