生駒尚子

  • 天雅の海へ – 生駒尚子

    水面に輝く 満天の星あれは大漁の 道しるべ掛け声揃えて 若い衆がヤーレン宝の 網を引く陸(おか)で待ってる あいつの為に俺の笑顔を 見せる為海よ、海よ荒れるな 騒ぐなと祈る天雅の この海よ 昆布の浜で 磆火(ほたび)を焚いて寒さ堪えて 番屋めし味が自慢の 団子汁(だごじる)にヤーレン鴎が 目を覚ます遠く離れた 千島(ちしま)の風に大漁旗を なびかせて船は、船はまだかと 心待ち耐えて天雅の 海を見る…

  • アジサイの花 – 生駒尚子

    アジサイの花が 雨に濡れてる私の心に 蘇るのは幼い思い出 懐かしい日々黄色いパラソル 父の温もりいつもの坂道 学校帰り大きな背中に しがみついてたあの日見た夢は もう帰らない季節の贈り物 アジサイの花 アジサイの頃に 生まれた私いつも心に 沁みてくるのは父から貰った 古いレコードTシャツ 自転車 優しい笑顔謡(うた)ってもらった 故郷(ふるさと)の唄泣き虫 弱虫 似たもの同士しあわせな時間(とき)…

  • 可愛いおんな – 生駒尚子

    命がけやねん 何にもいらへん捨てたらいやや あんた指輪をはずして 男に渡すこりない かおるの 貢ぎ癖夢を見て 夢を見て 泣いたけど誰にも迷惑かけてへん唇 かんだ 可愛い女 やっとお店を まかせてくれたとこぼした うれし涙十年近くも 日陰に咲いてどこまで みゆきは お人よし恨まずに 恨まずに 惚れぬいてそれでも まだまだ いらたぬとひとすじ尽くす 可愛い女 ほんま阿呆やねん 似たものどうしや乾杯しよ…

  • 父娘のれん – 生駒尚子

    雪になりそな 夜やから暖簾をおろして 父娘(おやこ)で 呑もか添えぬお人に 惚れぬいて意地を通した 親不孝口にだせない 詫びがわりお酒 注ぎたす カウンター 四十代(しじゅう)なかばで この俺を残していったと ため息ついてお酒 はいれば 母さんの思い出ばかりや そればかり外は小雪か 夜も更けて親の惚気(のろけ)に 目がうるむ 梅も凍える 如月(きさらぎ)に灯りがこぼれる 裏街通り酔って眠った父さん…

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