シャム猫を抱いて – 浅丘ルリ子

「悲しみの涙が　あの人の幸せに心をぬらした時それをひとは　愛と呼ぶのでしょうか孤独が　私の胸にあふれた時それをひとは　愛と呼ぶのでしょうかお願い　教えてあなた愛

燃えてゆく私も　さめているあなたもふたりとも溺れる　霧の夜がこわいの風もない星もない　何一つ見えない暗がりに残された　手探りのふたりに愛だけが灯りの　霧の夜がこ

あなたがいて　わたしがいるそこにもある涙心がゆれ動く　水色の季節あなたがきく　わたしがきく夜のひとり言を喜こびかみしめる　水色の季節とても不思議な　事があるのネ

あなたを知る前には(やさしさを持たない女でした)あなたを知る前には(呪われた罪人の様でした)あなたを知る前には(花の美しさを知らない女でした)あなたを知る前には

たとえそれを罪と　云われても心のすみでいつも　願っていたの愛しちゃいけない　人だけど今日こそは奪いたい　貴方のすべてああ　にわか雨の昼下がりヨコハマ悪いことと知

割れたガラスの上を　汚れた雨が濡らす捨てられた私には　似合いね泣けと言われて泣いて待てと言われて待ってなのにあなたは死ねと言ってはくれない生きて憎むより　死んで

都会の鐘の音が　聞こえるこの部屋であてもなく髪をとく　悲しい女ひとり指先でたどるのは　帰らぬ思い出風のように波のように　消え果てた夢よ悲しみはいつも女だけにつき

使わなかった　けれど鍵は　返さないわあなたの部屋の　古い鍵わざと忘れた　ふりをしてあなたがいつか　おいていった小さな愛の　愛のかたち使わなかった　けれど鍵は　返

愛こそこの世の　すべてだとほほえみ浮かべて　こらえる涙流れる雲に　何をたくそうせめて心の　青空をつめたい雨は　降り止まぬか細い手と手を　握り合い消えゆく希みを　

青い空が　呼んでいる小さなしあわせ抱きしめて白い花も　赤い花も火と萌えて丘は　丘は　花ざかり遠い雲が　歌ってるあふれる若さをよろこびを腕を組んで　歩く二人にそよ

雨の涙を　かみしめて生きるおんなの　かなしさよ愛する人に　背かれた港のブイの　灯が赤い長崎の　長崎の　恋は哀しくて船の汽笛が　さみしさがしみる坂みち　石だたみ小

この世に神様が　本当にいるならあなたに抱かれて　私は死にたいああ湖に　小舟がただひとつやさしくやさしく　くちづけしてねくり返すくり返す　さざ波のようにあなたが私

忘れてほしいの　二人のことは愛の夢はいつかさめる時が来るわおさない顔して　まどろむあなた鍵をおいて私ひとり部屋を出るわ別れましょう　別れましょう泣かずにあなた別