ナイト・パフォーマンス – 松田優作

暗闇のオブジェに水晶の瞳　光る水の中で踊る女　しなやかな指光なき世界に憎しみの影を落とす水の中で踊る女　黒髪のうれい人魚の群れ　銀河をわたる人魚の夢　時をかける

風にさそわれて　さまよい歩く知らない街を　たずね静かな朝を待つ飲み干すテキーラ　グラスの底に光がこぼれ落ちて静かな朝が来たわたれない河にいくつもの夢が消え恋のか

エスパニアエスパニアの風夢うつつに心乱れて恋にただようイザベリアイザベリアの夜夢かげろう狂いさまよう恋におぼれる遠いアメリカ熱いアメリカ胸がはりさけイザベリアイ

鈍色の空　鳩が飛ぶ青錆びた屋根　影もなく行き交う風に　身をまかせあてもなき夢　胸騒ぎふるえる　熱き思いも風の中　消えて行くうつろな　心の中であふれては　消えて行

壁をはう女の指に　ベルベットの肌ざわり背中を伝う　水玉模様淡い月あかり　白い胸舗道を濡らすサーモンピンクの街あかりとヘッドライトカクテルDeja-Vu　カスバの

Low Low way　246ステアリングポジションLow Low way　246はがれた　マニキュア紛(まが)いもののルージュターン唇が　湿るchu chu

No mind no　踊るマリエル蒼ざめた　横顔No mind no　酔ったマリエル淋しげな　呟きNo mind　暗闇に眩しくもつれる　ステップターン虚ろに切り

どうする今度は　手掛かりのないまま日捲(めく)りのカレンダーの裏に書き印された　数字を辿る8時から10時迄　無口な女で居続けるなんて後戻りも出来ないままに淋しい

街はイブの魔法に　酒とバラ波の上で爪先立てて　オペラ踊る太陽の香りがする　君を見つけた不思議な出来事　真夏の吹きかける赤い吐息　熱くまどわせる闇の中で抱きしめあ

独り飲む酒　悲しくて映るグラスはBluesの色たとえばBluesなんてききたい夜はYokohama Honky Tonk Bluesヘミングウェイなんかにかぶれ

Don't Cry Mary　涙をふけよDon't Cry Mary　もう俺は行くからNineteen　お前の夏を焦がしたのは俺さ西陽に溶けて汗ばむお前を愛した

Bay City Blues夕陽の中にお前を見てたBay City Blues港の風がこの身をしばる涙でかすみ汽笛が消えるChain Smoke　おしまいさまぶ

俺には止められなかったさ破れた恋とわかってても安っぽいロマンスを追いかけお前は街を飛び出した俺にはもう言えなかったさ笑って去ってゆくお前に涙のハイウェイ飛ばすし

雨ふる街を　かさもささずに酔いにまかせて　ひとりたたずむふりむけば 紅いルージュのお前が泣いている明日が見えない　灰色の街なんだよ酒場でブルース　聞いてみたけど

ミサイルが飛んで来たらこのあたりが　グラウンドゼロだと印をつけるだけどその前に煙草の火で枕が燃えそうだよ　ダーリンベッドで未来を考えないでくれ裸で眼鏡とシャープ