市川由紀乃

  • おんな港町 – 市川由紀乃

    おんな港町どうしてこんなに 夜明けが早いのさそれじゃ さよならと海猫みたいに 男がつぶやいた別れことばが あまりにもはかなくて忘れたいのに 忘れられないせつない恋よおんな港町 別れの涙は誰にもわからない おんな港町涙をこぼして 錨(いかり)が上るのさ泣いちゃいけないとあわてて男が デッキで手をふったその場かぎりの なぐさめとわかっても忘れたいのに 忘れられないせつない恋よおんな港町 さみしい笑顔に…

  • for you… – 市川由紀乃

    涙をふいて あなたの指で気付いたの はじめてあの頃の私 今日までの日々を見ててくれたのは あなた わがままばかりでごめんなさいね恋人と別れてあなたの部屋で 酔いつぶれてたそんな夜もあった 想い出せば 苦笑いね淋しさも悲しみもあなたのそばで 溶けていったいつもいつの日も もしも 逢えずにいたら歩いてゆけなかったわ激しくこの愛つかめるなら離さない 失くさない きっと あなたが欲しい あなたが欲しいもっ…

  • 情炎 – 市川由紀乃

    どうせあんたは 他者(よそ)のひと夜明け来る前 帰るひと窓をたたいて 風が言うそんな男(やつ)とは「別れな」と涸れたはずでも 涙でて月日数えて 振り返る世間どこでも あるようなこんな恋でも 私には夢なら このままで 花なら 枯れないでこのまま帰らずに このまま傍にいて きっとあんたの 心には棲(す)んでないのね 私など別れ言葉は 持ってても逢えば消えます ねえあんたポロリポロリと 冬の宿残る足あと…

  • 道頓堀人情 – 市川由紀乃

    ふられたぐらいで 泣くのはあほや呑んで忘れろ 雨の夜は負けたらあかん 負けたらあかんで 東京に冷(つ)めとない やさしい街や道頓堀(とんぼり)は未練捨てたら けじめをつけてきっぱりきょうから 浪花に生きるのさ くちびるかんでも きのうは過去やわかるやつには わかってる負けたらあかん 負けたらあかんで東京に冷(つ)めとない やさしい街や道頓堀(とんぼり)はでんと構えた 通天閣はどっこい生きてる 浪花…

  • 池上線 – 市川由紀乃

    古い電車のドアのそば 二人は黙って立っていた話す言葉をさがしながら すきま風に震えていくつ駅を過ぎたのか 忘れてあなたに聞いたのにじっと私を見つめながら ごめんねなんて言ったわ 泣いては ダメだと 胸にきかせて白いハンカチを 握りしめたの池上線が走る町に あなたは二度と来ないのね池上線に揺られながら 今日も帰る私なの 終電時刻を確かめて あなたは 私と駅を出た角のフルーツショップだけが 灯りともす…

  • 花わずらい – 市川由紀乃

    咲いて いろどり 散れば それまで一夜わずらう 恋心さびしくたって くちびる 噛んで枯れやしません 花はまだ ワインの小瓶を 空けました酔うには ひとりじゃ 肌寒い来てはくれない 人の名を闇夜にくるんで 燃やしましょう すがる 指先は嫌(いや)なんにも 知らずに女は欲ばりで 抱いてあやとり 泣けばまぼろし誰のせいでもないじゃない怨みはせずに 悔やみもせずに枯れやしません 花はまだ 捨て身で 心も投…

  • どうぞこのまま – 市川由紀乃

    この確かな 時間だけが今の二人に 与えられた唯一の あかしなのです ふれあうことの喜びをあなたの ぬくもりに感じてそうして 生きているのです くもりガラスを 伝わる雨のしずくのようにただひとすじに ただひとすじにただひたむきに それは ばかげたあこがれか気まぐれな 恋だとしても雨は きっと 降り続く くもりガラスを たたく雨の音 かぞえながらどうぞこのまま どうぞこのままどうぞやまないで さよなら…

  • 魂のルフラン – 市川由紀乃

    私に還(かえ)りなさい 記憶をたどり優しさと夢の水源(みなもと)へもいちど星にひかれ 生まれるために魂のルフラン 蒼い影につつまれた素肌が時のなかで 静かにふるえてる命の行方を問いかけるように指先は私をもとめる抱きしめてた運命のあなたは 季節に咲く まるではかない花希望のにおいを胸に残して散り急ぐ あざやかな姿で私に還りなさい 生まれる前にあなたが過ごした大地へとこの腕(て)に還りなさい めぐり逢…

  • 命あたえて – 市川由紀乃

    はなれていました 長いことおんなひとり寝(ね) 眠られず息ずく乳房 抱きしめながらなおさら寂しい わたしの愛に誰か誰か 誰かおねがい 命あたえて 忘れてしまったわけじゃない愛のぬくもり 欲しいけど体が燃える 心が冷える傷つきすぎた わたしの愛に誰か誰か 誰かおねがい 命あたえて はなれていました 長いこと声をこらえる よろこびにとろけるほどの よろこびに身悶えしたい わたしの愛に誰か誰か 誰かおね…

  • 名前 – 市川由紀乃

    帰してください気持ちがないならここから先はもう戻れはしません ふれれば指の先ひとりが辛くなる逢いたくなる理由(わけ)に気づいているでしょう 夜風は答えを 急かすのに月は見てるだけ お願い 名前を呼んでくれますか好きだと言わずにいられるわけがない わかってくださいこぼれた涙を悲しいわけじゃない心の階(きざはし) 見えない糸をただ手繰れば届くはず言葉を探すから迷子になるんです 二人で答えに 近づけば道…

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