山本みゆき

  • おんな町 – 山本みゆき

    愛して結ばれぬ 恋を笹舟に乗せて流した 浅野川(あさのがわ)加賀友禅の 紅色よりもいのちは熱く 燃えたのにわかれ金沢 せつない…おんな町 ひとりで生きてゆく 明日(あす)を占えば月も朧(おぼろ)な 卯辰山(うたつやま)愛する男(ひと)に 生命(いのち)を賭けて白糸のよに 生きれたらなみだ金沢 儚い…おんな町 夜風の石畳 今も三味線(しゃみ)の音(ね)がこころ泣かせる 東山(ひがしやま)憂き世のさだ…

  • たからもの – 山本みゆき

    抱いてください 折れるほどみんなあなたにあげる ねえ…それで心が晴れるなら男だったら 笑ってよ冷たいこの世の むかい風一緒に耐えると 決めた人あなたは 私の たからもの 肩のぬくもり よせあえば露地のちいさな空に ほら…春を呼ぶよな流れ星二度や三度の つまずきで深酒するのは もうやめて故郷(ふるさと)出てきた 甲斐がないあなたは 私の たからもの 涙まじりの 人生(みち)だってついて行けたらいいの…

  • もどり雨 – 山本みゆき

    蛇の目であなたと 寄り添えば懐かしい横顔に 涙がにじむ肩は濡れても 女の胸は あたたかいこのままも少し 歩いていたいふたりに降ります… もどり雨 話せば尽きない 思い出がゆらゆらと店灯り グラスに揺れる交わす目と目に 心が通う めぐり逢いこのままも少し あなたのそばで今夜は酔いたい… もどり雨 いつしかあなたの 名前さえあの頃と同じよに 呼んでる私二度とあなたと はぐれぬように 触れる指このままも…

  • 浮世舟 – 山本みゆき

    二人のさだめを 乗せたこの川はどこへ流れて 行(ゆ)くのでしょうか夢の終りが 来る前にあなたしっかり 抱きしめて…桜(はな)の散り際 水面を染める恋はひと幕 浮世舟 女の短い 季節(とき)を惜しむよに啼いているのか 水鳥一羽岸も見えない 霧の中あなたしっかり 抱きしめて…誰もうらやむ 幸せなんてしょせん叶わぬ 浮世舟 噂に追われて 世間逃れても櫂(かい)にからんだ 昨日が重いおぼろ月夜の 迷い川あ…

  • 夢追いホタル – 山本みゆき

    泣かぬ蛍が ため息つけばすすり泣くのは 繻子(しゅす)の帯見たい逢いたい 一緒にいたい想い焦がれて この身も痩せてあなた私の 罪なひと…待てば夜長の つらさよ夢追いホタル 弱いようでも おんなの心恋のためなら いのち懸(が)け私ひとりの 幸せよりも二人分け合う 涙でいいのあなた私の 罪なひと…抱いて下さい も一度夢追いホタル またの逢う日を 聞けずに帰す軒に名残りの 夜半(よわ)の月恋の闇地を 照…

  • 風の嵯峨野路 – 山本みゆき

    一度かぎりと こころに決めてあなたと来たのよ 京都まで風の…嵯峨野路甘えて寄り添う 竹の径(みち)一夜泊(いちやど)まりの この旅にふたり最後の想い出を あゝ刻みたい 池に映した 片割れ月が尚さら悲しみ 誘います風の…嵯峨野路この身をひきます 竹の里もしもあなたを 奪ったらきっと不幸にしてしまう あゝあの女(ひと)を 夢幻(ゆめ)と知りつつ 溺れて燃えた悔やみはしません この恋を風の…嵯峨野路情念…

  • 高山本線 – 山本みゆき

    故郷なんか 捨てたはずなのに恋をして傷ついて 乗っていました この汽車に高山本線 八尾まであなたの言葉を 思いだす不幸になったら 許さない…旅人のふりすればひゅるひゅるると 風が泣きます ひと駅ごとに 秋は深くなり町灯り寒々と ともる日暮れの淋しさよ高山本線 八尾まで出せずに終わった 恋文を未練としりつつ 抱きしめる…ふりむけば東京はひゅるひゅるると 風に消えます 待つ人ひとり 誰もいないけど口紅…

  • 萩の月 – 山本みゆき

    一緒に行けない この人と幾つの石橋 別れ橋こうしてふたりで 歩いた道を忘れはしません 最後の夜も…待つ身悲しい 女の夢が揺れて揺れて 揺れて切ない 萩の月 過ごした季節の 思い出は櫻の舞い散る 石畳夕陽の宿では 波音聞いて甘える倖せ はじめて知った…生きて行けます 恋しさだけでなんでなんで なんで寂しい 萩の月 椿の花より 炎える口紅(べに)愛しい小指に 押し当てる生まれたこの町 捨てると言えばど…

  • 萩物語り – 山本みゆき

    まさか夢なの 夢じゃない頬をあなたが 優しくつねる別れて十年 止まったはずの胸の時計が 春を指すうれし涙で みかんの花がほろりこぼれる 城下町 好きなあなたの 志(こころざし)守りたかった 身を引いてでもあれから一人の おんなの道は先の見えない 鍵曲(かいまが)り 恋の一文字(ぐともじ) 書くたび消える 波がさらった 菊ヶ浜(きくがはま) どんな時代に 生まれても糸を手繰れば あなたに続く小さな町…

  • 山鹿慕情 – 山本みゆき

    うらむ気持よりも 幸せでしたたとえ短い 月日でも愛し合えたわ ふたりしてあゝ 山鹿を… 忘れないあなたがいるから いつまでも いつか雨に濡れて 八千代座(やちよざ)通り歩く私の 肩抱いて寒くないかと なぐさめたあゝ あの日の… やさしさが心の底まで しみました あなたいるかしらと はかない夢を抱いてさまよう 鞠智城(きくちじょう)だけど逢えない 湯の町よあゝ 山鹿の… 灯籠(とうろう)がこらえる涙…

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