奥村愛子

  • 退屈な思い出 – 奥村愛子

    窓も開けたまま出かける 私と電源も抜いて出かける あなた目覚ましは五回で起きる 私と少しの足音で起きる あなた でこぼこがうまく上手に噛み合いちょうどいいバランスなんて思ったどこかまではあなただって きっとね思っていたのでしょう お風呂は熱めが好きな私からすこし冷めたあと あなたが入ってそれでも熱いと叫ぶ声がしたそうだね なんだろ 挙げればぜんぶ 退屈な思い出だひとに話すほどのこともない退屈な思い…

  • 君とアイスとプラネタリウム – 奥村愛子

    むかし誰かが名付けてくれた 星座の名前を呼んで語る休日の過ごし方は そう 君がおしえてくれたのさ お気にいりのアイスクリームと いつもセットのコースでレアチーズとチョコとプラネタリウム ねえ なんてステキなことでしょ ああ まあるい星空見上げて 隣に君がいる愛だなんて奇跡なんて 今日は言ってみようかな星空見てたら うれしくなっちゃってさ少し寝ちゃった なんて照れ隠し ふいにため息つくよなことも ほ…

  • 時間の問題 – 奥村愛子

    覚悟を決めたって ねえ そんな声で言わないで友達にだって ずっと大丈夫に見えてたのに 落ち度はこっちだって そう わかりきってはいるけど急だよ だって ずっとつづくと思っていたじゃない 駅までの道 曇ってぱらついてきた雨宿りの カフェは定休日タクシーもとまらない 全部この電話のせいだ 言った言わないのリピートで無味乾燥な時間を過ごしても毒にも薬にもならないこの時を 引きのばして朝まで 引きのばして…

  • モールガール – 奥村愛子

    ホシはクロだと狙い定めたら CIAかマタ・ハリか 女だからと気を許しちゃって 脇の甘い男だね見くびらないで 侮らないで コードネームは“モールガール” フェイク散りばめ 羊の顔して 近づいたわるいもぐら気づかれないで 悟られないで 果たすお仕事 もうすぐなの もうすぐなの種明かしちゃえば これきり すべて幻だったのさ 嘘みたいな真実でしょうああ 心のなかでは あきれた顔して 試していたのに本気にな…

  • けんかのマーチ – 奥村愛子

    さわがないで 横の子供が起きるでしょうわめかないで 面倒だけはきらいなの おこらないで おこりたいのはこっちなの人が見るわ ここはお家じゃないのです 建設的に 間を取って 丸く収めましょう けんか けんか わたしとあなたの けんかのマーチけんか けんか けんかの行方は見逃せないわ どうなる引いて押して 引いたら押したら どの手で来るか覚えてなさいな パヤパヤパヤパ けんかのマーチ さわがないで 店…

  • あれは恋じゃなかった – 奥村愛子

    ほんのすこしのいたずら心と 君も最初は思ってたはず私も そのつもりでいたの するりと逃げたマフラー拾って わざと指に触れて渡す君見ないで 吸い込まれそうよ 本気だと 君が言うほどに なぜか笑い飛ばしてしまうyounger boy こんなストーリー あるわけないもの あれは恋じゃなかったの きっと言い聞かせて ひとつ深呼吸恋じゃなかったと 言って落としもの拾って 渡すくらいこのままの距離で仲良くしよ…

  • ずっとストライプ – 奥村愛子

    遠くから 聞こえる声は恋をした白鳥か わらうカラスかゆっくりと明けてゆく空繋がったあの影は まぼろしか 今日もまた 微笑み浮かべ縞模様のふたりは街を彷徨う分かち合う 愛じゃないものドアを開けて 秘密の裏側へ ああ それ以上は マーブル 濁るのはいやなのよああ 綺麗なままの 白でいさせて 交わらない あなたとわたし ストライプつかずはなれず ディスタンス綱渡りの関係がちょうどいいねえ・この先・どうす…

  • 助手席に乗らないか – 奥村愛子

    今 隣にいるのは 君の知らないひとちょっと変わったひとでね 君を少し忘れられそう そっちは 隣にいるのかい ハンドル握る誰かが同じように その細い髪 シートに残しているんだろか ライラック ペパーミント どのそよぐ芳香りも影まで消せない 助手席に乗らないか もう一度乗らないかいつものパーキング いつものナンバーに来てよ送るから乗らないか もう一度あの頃みたいに手が届きそう 30センチ まだいる君の…

  • 仮面白書 – 奥村愛子

    わたし お化粧取っても すっぴんじゃないあなた いつまでたっても 気づかない そのままの君がいいなんて 本当に思ってくれてたの嘘を被ったこのピエロに騙されてた かわいそう まつげもまゆげも目鼻も言葉も 丸ごと全部ニセモノねえ見て 一張羅なの この仮面 綺麗でしょう これ以上 ごめんね さようなら鈍いあなたが好きだったわ正体は知らないままでいい大きくなりすぎた 秘密守らせてください 秘密 それなりに…

  • 少年ライアー – 奥村愛子

    どこにでもいる少年だ 印象は特になかった紛れ込むのが上手で気づけばそこにいた おかしいと言い出したのは 五メートル周りの連中きっかけが何だったか わかりはしない 微笑み浮かべて 今日もやって来る 少年ライアー うそつきライアー君は一体 心をどこに隠して笑っているのかいねえライアー そろそろ教えてくれてもいいじゃないWHO ARE YOU 暇つぶしなんかじゃないね 何か理由があるんだろういいよ もう…

Back to top button