城所葵

路地裏のネコ – 城所葵

ちょっと隣の席いいかしら?
出来心で 乾杯したの
今日も 虚しいハイヒールで狩るわネコ
赤い爪を隠して

午前零時 ほろ酔い甘えて
気づかぬまま わたしは虜

今宵飲んで飲んで飲んで
声で撫でて撫でて撫でて
ほんの通り過ぎの人のはずだったの
もっと酔って焦(じ)れて落ちて
騙されてもいいのいいの
路地裏に咲いた花の宿命は 幻

ちょっと 裏の路地のBARで一杯
引っ掛けても 酔えやしないわ
今日も 都会(まち)の砂漠彷徨い泳ぐネコ
明日も見えないままに

午前三時 鳴らない踏切
滑り込んだ 恋は曲者(くせもの)
夜に溶けて溶けて溶けて
朝に消えて消えて消えて
ほんの気の迷いの人のはずだったの
もっと近く強く熱く
思うほどに遠く遠く
路地裏に咲いた花の宿命は 陽炎

今宵飲んで飲んで飲んで
声で撫でて撫でて撫でて
ほんの通り過ぎの人のはずだったの
もっと酔って焦(じ)れて落ちて
騙されてもいいのいいの
路地裏に咲いた花の宿命は 幻

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