坂本冬美

  • 出逢い酒 – 坂本冬美

    明日(あす)という日が 辛くてもおまえの笑顔で 越えられる花を飾って 今夜は飲もう苦労つづきの 暮らしでも 逢えて良かった 二人の出逢い酒帰る故郷も 家もない浮草(うきぐさ)どうしの めぐり逢いあの日お前と 逢えずにいたら俺は今でも 酒びたり今日で一年 二人の出逢い酒 おまえ居るから 明日(あす)があるいつでも出直す 夢があるこの手離すな 死ぬまで一緒寒いこの冬 越えたなら風が春呼ぶ 二人の出逢い…

  • 梅川忠兵衛 – 坂本冬美

    雪のふるさと 落ちゆく影は死出の晴れ着の 梅川忠兵衛恋と意気地の 封印切りに夢も散り散り エー 追われ旅 「梅川ッー わしはえらいことをしてしまった…。さっきお前の身請けといって耳をそろえて出した小判の百五十両‥‥あの金は、あの金は、お上からお預かりした金なのだ」「エエーッ」「それは、あの古物買いの八右衛門、お前の身請けをするという。金はそろえてあるという。このままでは命をかけたお前が、八右衛門の…

  • 再会酒場 – 坂本冬美

    明けて巣ごもり 達者でいたか先(ま)ずは乾杯! 再会酒(さいかいざけ)だ人生(たび)につかれた 俺達にゃ此処(ここ)は心の 船着場おかみ! 酒だよ あゝ 人肌(ひとはだ)で まるで昭和が 割烹着(エプロン)つけて立っているよな おかみの笑顔ふっと遥かな おふくろを重ねあわせて ホロリ酒よせよ! いつまで あゝ ガキのまま 泣いているよな てるてる坊主紺の暖簾(のれん)も くたびれたけどおかみ頑張れ…

  • 明治一代女 – 坂本冬美

    浮いた浮いたと 浜町河岸に浮かれ柳の 恥ずかしや人目しのんで 小舟を出せばすねた夜風が 邪魔をする アラ、お月さま。この梅雨空で、うっとうしゅうござんしょう私もねえ、旦那も持たずに芸一本で、この柳橋での辛い芸者稼業…でもねえ、この叶家お梅にも、やっと春が来たのよねえ。新富町の蔦吉姐さんと、深い訳ありの今、人気絶頂の花形役者津の国屋の太夫さんと、ひょんな事から駒が出て、想い想われ…あら嫌だ、ごめんな…

  • 酔中花 – 坂本冬美

    後をひくよな くちづけを残して帰って 行ったひとおとな同志の 粋な関係(なか)それでいいのよ いい筈(はず)なのにあたし! ヤダな めめしくてとまどい 酔中花(すいちゅうか) お止(よ)し本気に なるなんてお酒がわらって 止めるけど逢えない夜の 肌寒(はださむ)さつめのさきまで 淋(さみ)しいよあたし! ヤダな めめしくてゆらゆら 酔中花 これが最後の 恋なんてシレーっとまた嘘 ついたひと及ばぬ夢…

  • 傷心 – 坂本冬美

    貴方の後姿 だんだん小さくなる一度も振リ返らずに 去って行くのねサヨナラも 言えないまま こうして立っているだけ今更 呼びとめたって どうにもならない 同じベッドで 眠って同じ朝を 迎えただけど 互いに違う事 考えていた今まで 何度も 恋をしただけど 貴方となら死んでも いいと 思った 貴方の後を追いかけ うしろから抱きしめたい貴方の背中にもう一度 顔をうずめたい瞳をとじてみれば 貴方のやさしい顔…

  • わかれうた – 坂本冬美

    途に倒れて だれかの名を呼び続けたことが ありますか人ごとに言うほど たそがれは優しい人好しじゃ ありません 別れの気分に 味を占めてあなたは 私の戸を叩いた私は別れを 忘れたくてあなたの眼を見ずに 戸を開けた わかれはいつもついて来る幸せの後ろをついて来るそれが私のクセなのかいつも目覚めれば独り あなたは愁いを身につけてうかれ街あたりで 名をあげる眠れない私は つれづれにわかれうた 今夜も 口ず…

  • 恋人よ – 坂本冬美

    枯葉散る夕暮れは来る日の寒さをものがたり雨に壊れたベンチには愛をささやく歌もない 恋人よ そばにいてこごえる私のそばにいてよそしてひとことこの別ればなしが冗談だよと笑ってほしい 砂利路を駆け足でマラソン人が行き過ぎるまるで忘却のぞむように止まる私を 誘ってる 恋人よ さようなら季節はめぐってくるけどあの日の二人 宵の流れ星光っては消える 無情の夢よ 恋人よ そばにいてこごえる私のそばにいてよそして…

  • 哀歌<エレジー> – 坂本冬美

    しがみついた背中に そっと爪を立てて私を刻み込んだ もっと 夢の中へ ひらひら 舞い散る 花びらがひとつゆらゆら 彷徨い 逝き場を無くした その手で その手で 私を 汚して何度も 何度も 私を壊して汗ばむ淋しさを 重ね合わせ眩しくて見えない 闇に落ちてくいつか滅び逝くこのカラダならば蝕まれたい あなたの愛で この病に名前が あれば楽になれるはみ出すことが怖い どうか 群れの中へひらひら 舞い散る …

  • 真夏の夜の夢 – 坂本冬美

    骨まで溶けるようなテキーラみたいなキスをして夜空もむせかえる激しいダンスを踊りましょう 私 遠い夢は待てなかった 最後は もっと私を見て燃えつくすようにさよなら ずっと忘れないわ今夜の二人のこと 花火は舞い上がりスコールみたいに降りそそぐきらきら思い出がいつしか終って消えるまで あなたの影 私だけのものよ 最後は もっと抱いて抱いて息もできぬほどさよなら ずっとアモーレ・アモーレこの世であなたひと…

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