吉田真里子

  • 冬すみれ – 吉田真里子

    今 立ち止まった今 振り返った あなたを感じながら何故 振り向かない何故 急ぎ足の 私を見つけて ときめく頃にもう戻れないそして私だけが 寒い季節を待ち 寒い言葉探すまるであなたを傷つけるためあなたは悪くない悪くはないのですふれた笑顔に 胸痛い午後 また 黙りこめばそう 心配気に 顔を覗きこむ人ふと 責めたくなるねえ そんなすべて あなたのせいよと わがままだけを重ねてゆけば気付いてくれますか 白…

  • エチュード – 吉田真里子

    今 還らぬ季節の中 憂鬱な坂道を立ち止まっては靴を持ちかえ 歩いたねまぶしい木洩れ日や 枯れ葉の音や予感を包みざわめいた街路樹 手渡された幼い心は傷つけない術も知らず 初恋はいつだって 残酷なものなの真剣な瞳は怖いと笑った時は行き 人を変え こだわりはあせてもそう 消えない 罪の景色ね 何度もすれちがう 偶然の後初めて言葉をくれた人右手に抱えた 辞書を隠して日焼けた腕を まぶしいと思った 声も奪う…

  • 雨音 – 吉田真里子

    雨の日ばかりが続くので、あの人の家を訪ねてみました。あの人の家は急に潮の香りの強くなる岬の側にあって、低い雲のたれこめた今日は、細かな雨粒からきりもなく海に消えてゆくのです。呼び鈴をふたつ。それから少しお行儀悪く門の中をのぞきこんで、どうしてこんなに好きなんだろう。傾けた水色の傘に問いかけてしまう。けれどあの人は困ったようにドアをあけて、今日の雨よりも寒い目でドアをあけて。私は用意していた笑顔も、…

  • 街路樹の町 – 吉田真里子

    バス通り 昼下がり日除けおろし うたた寝の街に好きだったベーカリーバゲット焼ける時間 知ってる 立ち止まったら変わらぬにおいになつかしがってる私 不思議なの ふいに名前を あなたに呼ばれそう振り向けば 坂道を急ぎじらしたいのに 笑顔がこぼれてくそんな恋 見つめてた町 カウベルの響くドア寄り道して 通ったお店よ止めていた自転車に秋の葉 降り積むまで話した バナナジュースを飲んだら帰ろう制服の群れ戻る…

  • 女の子は大変 – 吉田真里子

    昨日書いた手紙 朝にはてれてだせない昨日泣いた理由は 私も知らない制服のボタンが ほら取れかけているでしょう放課後の約束 突然しないで 不安気な表情が隠せないからかわいい心で思うだけよ 顔にも出さないわ 「明日誘ってね」「今日はちょっとね」でも 心配になる何も知らないで 悩んでるでしょう?もう 恋なのにね 私なら 違う誰かと居て 楽しそうなら悲しい悩み告げられたら ごめんね嬉しい誕生日のことを 思…

  • 瞳をふせないで – 吉田真里子

    瞳ふせないで 君は負けないでほほ打つ この雨を吹き飛ばしてどうぞ負けないで 君は信じてて今 すべてが叶う未来 風吹きすさぶ空に そう引き裂いた地図がまういつか その指で君がなぞってみせた遠い街の名が揺れて もう悲しみへ急ぐ その横顔を止めたくてふいにくちづけた勇気 精一杯のそんなせつなさを知って きっと見つめてる いつも信じてるそれしか いつだって出来ないけどどうぞ負けないで 君は信じてて今 すべ…

  • 夏の恋人達 – 吉田真里子

    愛を止めないで 夢を消さないで涙乾かし 思い出 今ポケットに入れ銀の坂道を 白いランクルで駆け抜けた ふたつの影 渚まで手をつなぎ 歩いて確かめあったの言葉では言えないが 好き 信じているのよ 「抱きしめてね」と、そっと耳元で Kiss窓の陽射しが 頬を染めてゆく 薔薇色に 愛を止めないで 夢を消さないで光る波間で おぼれた 真夏の恋人星のパラソルを 二度と忘れない幸福に 鍵をかけて 聞かせてね …

  • 潮騒 – 吉田真里子

    ぎこちないときめきに輝いた夏休み誰も知らない恋ひとつ 秋風 まだ呼ばないでさよならも 胸に隠したままひとりよ 訪れた渚に どうして 優しい響きその声が 今も残ってる君にね あこがれてたと 急に風が止まり 砂がまぶしかったさわぐ夏の影 うなずく私の ぎこちないときめきに輝いた夏休み誰も知らない恋ひとつ なんにも話さないねとつぶやいた声さえ優しいあなたに似合わぬようで 波を数えるだけ 砂を集めるだけふ…

  • 手紙 – 吉田真里子

    悲しみをください あなたの心に二番目に重たい 悲しみをください 降る花びら また五月雨ミモザ色のきらめき 私は私は 幸せな人ねあなたにあなたに 望まれた心を心を 預けて足りない何故なの もどかしいの 微笑みをください そしてただひとつきれいな心から ある朝泣けるように もう夕闇 影ふたつにふれた指の確かさ 夜空も詩集も音楽も色も微笑みひとつにそぐわない小さな小さな私が寂しい落とした涙の色 降る花び…

  • 君の夢が聞こえる – 吉田真里子

    君だけに行けるその道の果てしのなさ君だけにわかるその答え 逸(はや)る胸 ありふれたシャツを脱ぎ捨てた寒い夜明け涙は教える その胸に熱きもの You Dream Your DreamYou know All The Dream Come True… 信じて 鳥は行き 鳥は舞う 果てしなき大空を人は越え 人は行く 夢見た力に導かれ 哀しい地平に その影が見えなくなる確かな祈りは 距離を越え響くもの …

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