伍代夏子
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港ラプソディー – 伍代夏子
月のしずくを浴びて 歩く遊歩道枯れたピアノがよく似合う 白い石畳男も女も 通りすがりのエトランゼ外国航路の船が行く汽笛を残して遠去かるあなたにもたれてたたずめば港ラプソディー レンガ造りのホテル もれる窓明かりまるで異国に居るようで 胸が熱くなるきらめく星屑 風も切なく吹くばかりダブルの背広に沁みこんだ煙草の匂いがほろ苦いも少し歩いていいかしら港ラプソディー 男も女も通りすがりのエトランゼ外国航路…
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鎌倉八景 – 伍代夏子
来(こ)し方(かた)の 夢を集めて今もなお堀割りくぐる 水の音好きで会えない 運命(さだめ)でも心にあなたを 忍ばせてひとり佇み 紅を引く この道も いつかあなたに続く道願えば叶う 切通し一期一会の この絆しあわせ祈って 手を合わす日暮れ長谷(はせ)寺 半夏生(はんげしょう) ときめいて 燃える心の篝火(かがりび)をあなたにせめて 届けたい小町通りの 人の波抜ければつつじの 段葛(だんかずら)結ぶ…
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春子 – 伍代夏子
はじめてお店へ 出たときに貰った名前が 春子です桜の花びら 妖しく散って春もひととき 春もひとときあゝ夢ん中 別れてお店に また勤め夏子という名に 変えました若さにまかせて 抱かれるたびに嘘がせつない 嘘がせつないあゝ水中花 流れてお店は 港町秋子という名の 酔っ払い背すじをのばして 生きてはみても酒がささえの 酒がささえのあゝ幾千鳥 何処かでなにかが 間違ったナイフを握った 冬子です桜の花びら …
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ひとひらの雪 – 伍代夏子
はらはらと はらはらと雪が降る こころに赤い花 赤い花 雪椿ひとひらなぜ 一夜だけの なぜ 恋人(ひと)なのなぜ もえ残るの くちびるが素肌にはおる 絹の単衣(ひとえ)に移り香が闇にこぼれ じれる黒髪 こらえても こらえてもあふれだす 愛しさ雪の宿 雪の宿 降りつもる哀しみなぜ 朝が来るの なぜ 別れのなぜ ひとり行くの そばにいて汽笛が遠く 白い平野を追いすがる瞳の中を あなた消えてく あなたに…
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渋谷百年総踊り – 伍代夏子
百年前にもお会いしましたか朱鷺色浴衣 可憐な娘金王八幡宮 子授け祈願祭囃子も下る坂手拍子合わせて ながめてかざす踊れ弥栄 集えや谷へ渋谷百年総踊り 秋田生まれで ふるさと東京ハチと呼ばれて幾年か景色変われど 花咲く笑顔今日はどなたが待ち合わせ手拍子合わせて ながめてかざす踊れ弥栄 集えや谷へ渋谷百年総踊り 百年先でもお会いしましょうね緑豊かな街並みと百軒店から恋文送ろうか春の小川はさらさらと手拍子…
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虹の橋 – 伍代夏子
深く身体 眠りつけば心は風に乗りどこへだって 飛んでゆける哀しいだけじゃない 自由になる 素敵よ青い空の上いつか また逢えるわ大丈夫よ ひとりじゃない虹の橋から 見つめているわ離れやしないの 心は… 傷ついたり 傷つけたり悩んだ日々は そう自分らしい 想い出なの心の彩りは 生きたあかし 素敵よ青い空の上みんな また逢えるわ大丈夫よ そばにいるの虹の橋から 逢いに来るから離れやしないの 心は… 青い…
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いのちの砂時計 – 伍代夏子
さらさらと落ちてゆく いのちの砂時計誰も止められない 誰も戻せはしない泣かないで あなた私 哀しくない限りある人生 だからこそかけがえのないもの空を 見上げれば春は桜の 花びら砂時計時は 流れゆく夏は日差しの 木漏れ日砂時計 さらさらと落ちてゆく 私の砂時計自分らしく生きて 何も悔やんでないの泣かないで あなたいつも そばにいるの目を閉じて私を 感じてね抱きしめているから空を 見上げれば秋は色づく…
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千本曼殊沙華 – 伍代夏子
月が弓引く 夕間暮れ 長い廊下は つなわたり行(ゆ)けば地獄 戻れど地獄 ならば ならば行(ゆ)きましょう憎さ恋しさ じんじんと 逢えば逢うほど ふえてゆく直らぬままの赤い傷 ああ 心一面 曼殊沙華(まんじゅしゃげ) 夢はやさしい 嘘なのに 知っていながら 夢をみる泣けば地獄 叫べど地獄 いっそ いっそ微笑んでからむ手足の あやとりが もつれもつれて 離れないあなたが誰を愛しても ああ 私真っ直ぐ…
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時の川 – 伍代夏子
女ひとりの 笹舟で流れてきました 時の川夢はいつでも 泡沫で涙に溺れる ことばかりそれでも 愛に愛につかまり生きてきました ひたむきに 何度 渡ったことでしょうこの頬流れる 涙川いのち沈める 恋をして裏切り滝にも 落ちましたそれでも あなたあなた一筋惚れてきました ひたすらに きっと誰もが 旅人で流れてゆきます 時の川舵のとれない おんな舟積むのは未練と 哀しみとそれでも あすをあすを信じて生きて…
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夢追い海峡 – 伍代夏子
もしも私が 鴎ならあなたの後を 追うものを桟橋離れ 汽笛に泣いて握りしめてる 別れのテープ切れないで…切れないでおんな美恋(みれん)の 夢追い海峡 炎(も)える想いを 曳いてゆく潮路に沈む 恋ひとつあなたはどうせ 仕事を捨ててここで暮らせる 人ではないわ言わないで…言わないでおんな美恋(みれん)の 夢追い海峡 だけどどこかで 逢えたならただそれだけで 泣くでしょう一途な女 綺麗な海で愛に溺れて 死…