井上昌己
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さよならパラダイスビーチ – 井上昌己
夏をつれ去る風がふたりの胸を吹き抜けた 白いデッキシューズの乾いた砂を払って 桟橋に立つ長い影に貝殻乗せてそっと手を振る Don’t ask me why さよならパラダイスビーチ夏の物語 波に乗せて帰れない 渚の天使が瞳をふせたら遠い海に涙をあずける 折れたサーフボードが浜辺の砂に埋もれてた 空は他人のように悲しいほどに澄んでる 古びたバスが運ぶ人は誰も無口に海を見ている 想い出を集…
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忘れてあげない – 井上昌己
無茶苦茶な誘いかた意味のないついでのようにあやふやな あの日から騒がしい疑問符たち 嫌われるよりも苦しい気のない素振り 見せるひと ひとこと私から言わせてよあなたを忘れてあげないこころの行き先は交通渋滞待つしかない日もある 真夜中のテレビジョン眠れずにぼんやり観てるルーズリーフ・ノートに書く「恋」というああひと文字 優しさ見えない態度でうれしいセリフ 言えるひと あなたのいたずらな横顔も笑顔も忘れ…
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それぞれの微笑 – 井上昌己
5メートルの風が好きスピード上げる自転車草原を駆け抜ける夢みたい長い髪をなびかせて あなただけを見つめていた瞳に今地平線が映るの人の心って広いものね悲しみさえ許せてしまう ブレーキよりベルを鳴らす思い出のカーブ私と彼 彼と私そんな日もあった 5年前の顔が好き恋にあこがれていたわテニスコートにネット張りながら雲のボール追い駆けた 失くしたのが無邪気さなら一日だけ早く大人になるわ涙に刻んだ日付なんてい…
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ロマンスに帰りたい – 井上昌己
麦わらの帽子はあの日細波にさらわれ消えた絹糸の雲は見てた幼い頬 濡らす私を ほほえみながら海のある町から遠くいまは人の波にのまれビル街の低い空に沈む夕日 こころ細くて 見るのが怖い 瞳に帰りたい あなたのロマンスに優しい潮騒が この胸 あふれるから 見飽きたはずの風景に風が運んだ絵のように 町を出てゆく日の雨は眩しすぎた恋のかけらサヨナラを責めるように見つめたあと わがままな夢 許してくれた海猫が…
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すこし淋しいだけ – 井上昌己
何気なくついた 溜息ひとつがあなたを傷つける時があるのね傘の花が咲く ガラス越しの街見つめているうちにただなんとなく 記憶のページ めくる指先失くしたものは何もないけれど Only Lonely 過ぎてゆくOnly Lonely 毎日がOnly Lonely すこし淋しいだけ Only Lonely 雨音のOnly Lonely リフレインOnly Lonely バラードのように聴こえるから なな…
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イヤリングのはずしかた – 井上昌己
風のない夜更けにもひとりぼっちの海は寒いあのひとがくれた夏波の形のear-ring はずした 瞳(め)を閉じれば聴こえてくるすぐ背後(うしろ)に優しい声 「もう駄目なの?」あの時訊かなきゃ良かった眼差しが曇るそれが答え 「ねぇ嘘でしょ?」背伸びをしすぎたこともはじめての全部愛のせいなのに。 俯向けば淋しげな爪先あたり波が洗う始まりと終わりとがこんなに違う季節 知らない 哀しいけどあのひとには夏かぎ…
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あさきゆめみし – 井上昌己
まどろみに 消え惑ふあなたであふれる 胸のなか ひたむきな決心に 心が揺れた出逢ったあの日 たかだか ひとつの恋を失った それだけなのに 浅き夢みし 散りゆくこと分かってた 強がってみる二人歩いた場所が淋しくて二度と重ならない影 ビロードの 夜の波溺れて息も出来ないほど 抱きしめた あたたかなあなたの手が まだ愛しいよ 私をはじき出すように簡単に 捨てたあの人 浅き夢みし 散りゆくこと気付かない …
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愛の終わりに – 井上昌己
季節でいえば 夏の終わり物憂げな海に たたずむ夕立はとうに 止んだのに潮騒の音に 身を任す あの日からめた 指の記憶愛の海に溺れた時は過ぎ 四季は巡りあてどない日々 蜃気楼の愛に 抱かれて甘い夢をさまよう蜃気楼の愛に さらわれて遠ざかる夏の日行かないで 季節でいえば 木枯らしの頃枯れ葉舞うまちを 通りゆく あの日重ねた 頬の記憶愛の吐息感じた時は過ぎ 四季は巡りあてどない日々 木漏れ日の愛を 告げ…
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いいんじゃない? – 井上昌己
誰もが悩み抱え 孤独を背負いながら傷付き 旅の途中 夕暮れが運んで来た 幾重にも伸びる雲過ぎ行く 時の流れ 繰り返す日々のなかで 問いかける満ち足りるとは? 命のリミットは? あたり前でもなくても いいんじゃない?近づく夢と 遠ざかる現の狭間属性 個性 バイアスを外して優しい風のように… 悪意なき無神経も 立ちはだかる試練も囚われなくかわしたい ごめんね 命のバトン 繋げられなかったわ過去へと 思…
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遠い夕暮れ – 井上昌己
僕がもし間違えた何かがあるのなら夢見坂で見送った君の背中だろう あれは遠い日 夏の日祈るような気持で「愛」を捨てたね 泣いたねくしゃくしゃに崩れた 夕暮れに佇んだ僕はただ無力でいつの日かこの傷みも失うこと怖れてた坂道を降りてゆく靴音が苦しくていつまでも見上げていた千切れてゆく雲の行方 山間(やまあい)を吹く風が幸せ運ぶ頃君の部屋のカーテンも揺れていて欲しい 僕は季節の匂いも花の色も忘れて生きる手段…