ヨルシカ
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へび – ヨルシカ
行方知らずのあの雲を見たわたしの鱗はあなたに似ていた舌は二つ、まぶたは眠らずぼやけたよもぎの香りがする 行方知らずのあの雲の下わたしの心は火の粉に似ていた靴はいらず、耳は知らず冬(あなた)の寝息を聞く ブルーベルのベッドを滑った 春みたいだシジュウカラはあんな風に歌うのか海を知らず、花を愛でず、空を仰ぐわたしはまた巫山の雲を見たいだけ 行方知らずのあの雲の下あなたの鱗は日差しに似ていた雨を知らず、…
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太陽 – ヨルシカ
美しい蝶の羽を見た名前も知らずに砂漠の砂丘を飲み干してみたい乾きの一つも知らずに 美しい蝶の羽を私につけて緩やかな速度で追い抜いてゆく ゆっくりゆっくりとあくびの軽さで行ったり来たりを繰り返しながら 美しい蝶の羽を見た醜い私を知らずに海原を千も飲み干していく少しも満ちるを知らずに 美しい鱗の粉よ地平を染めてあり得ない速度で追い抜いてゆけ ひらりひらりと木洩れの光で行ったり来たりを繰り返しながら 私…
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アポリア – ヨルシカ
描き始めたあなたは小さくため息をしたあんなに大きく波打つ窓の光の束があなたの横顔に跳ねている 僕の体は雨の集まり貴方の指は春の木漏れ日紙に弾けたインクの影が僕らの横顔を描写している 長い夢を見た僕らは気球にいた遠い国の誰かが月と見間違ったらいい あの海を見たら魂が酷く跳ねた白い魚の群れにあなたは見惚れている 描き始めたあなたは小さくため息をしたあんなに大きく波打つ線やためらう跡があなたの指先を跳ね…
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憂、燦々 – ヨルシカ
小さな約束も守れないから 大きな欠伸でごまかしていたな小さな幸せも見つけられないから 大きな目から涙を流してたな 愛しいだけじゃ足りないし 嬉しいだけじゃ不安だし優しいだけじゃ意味ないし 連れて行ってあげるから 憂、燦々離さないでいてくれるなら 何でも叶えてあげるから連れて行ってあげるから 憂、燦々離さないでいてくれるなら 何でも叶えてあげるから これからあたしたちどうなるのかな 今どうでもいい事…
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忘れてください – ヨルシカ
僕に心を君に花束を揺れる髪だけ靡くままにして 箱の中の小さい家の、二人で並んだキッチンの小窓のカーテンの先の思い出の庭に、春の日差しを一つ埋めて、たまには少しの水をやって、小さな枇杷が生ったとき忘れてください 僕に 僕に 僕に 僕に心を君に花束を揺れる髪だけ靡くままにして僕に言葉を君の鼻歌を長い長い迷路の先に置いて 一つ一つ数えてみて。あなた自身の人生のあなたが愛したいものを。……何もないのかい?…
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ルバート – ヨルシカ
あ、ちょっと楽しい花が咲く手前みたいあ、ちょっと苦しい水を忘れた魚みたい ルバート刻んでる私の鼓動マーチみたいメロがポップじゃないから少しダサいけど 私忘れようとしているわ悲しい歌を愛しているの飽きるくらいに回していたのそのレコード飽きのないものをずっと探していたわお日様とのダカーポくらい楽しい! あ、ちょっと悲しい月を見かけた野犬みたいあっと驚くほどに丸い少し齧ったら駄目かい 誰もが笑ってる そ…
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晴る – ヨルシカ
貴方は風のように目を閉じては夕暮れ何を思っているんだろうか 目蓋を開いていた貴方の目はビイドロ少しだけ晴るの匂いがした 晴れに晴れ、花よ咲け咲いて晴るのせい降り止めば雨でさえ貴方を飾る晴る 胸を打つ音よ凪げ僕ら晴る風あの雲も越えてゆけ遠くまだ遠くまで 貴方は晴れ模様に目を閉じては青色何が悲しいのだろうか 目蓋を開いている貴方の目にビイドロ今少し雨の匂いがした 泣きに泣け、空よ泣け泣いて雨のせい降り…
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テレパス – ヨルシカ
「どう言えばいいんだろうか例えば雪化粧みたいなそう白く降ってるんだ」「寂しさ?それを言いたかったのね」 「そう言えばいいんだろうか溢れた塩の瓶みたいで」 想像で世界を変えてお願い、一つでいいからもう一瞬だけ歌ってメロディも無くていいから寂しさでもいいから 「どう言えばいいんだろうか剥がれた壁のペンキなんだ何度も塗り直した」「想い出?それを言いたかったのね」 「そう言えばいいんだろうか嫌だな、テレパ…
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パドドゥ – ヨルシカ
優しい風の音が頬撫でる雲間鮮やか、揺れ花菖蒲この場所を僕らは覚えてる立ちくらみ、不格好風に流されて腰を下ろす原夏草は肌に擦れるまま思い出の中に貴方はいる 優しい風の音が頬撫でる土用の縁側、言葉足らず雲の下へ続く田舎道夏木立、不格好風に流されて足を運ぶままあの頃指差して進むまま 「さぁさぁもっと踊っていようよ腕を引かれるまま、情け無い顔のままで一生踊って暮らしていようよもう考えないでいいよ」 優しい…
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第一夜 – ヨルシカ
貴方だけを憶えている雲の影が流れて往く言葉だけが溢れている想い出は夏風、揺られながら 朝目が覚めて歯を磨く散歩の前に朝ご飯窓の向こうにふくれ雲それを手帳に書き留めて歌う木立を眺めます通りすがりの風が運んだ花の香りに少しだけ春かと思いました 貴方だけを憶えている雲の影が流れて往く言葉だけが溢れている想い出は夏風、揺られながら 昼は何処かで夢うつつふらり立ち寄る商店街氷菓を一つ買って行く頬張る貴方が浮…