曇りの窓 ふわり ひとひら
白い欠片(かけら)が 舞い初(そ)む
凍てる綺羅(きら)の水晶 指に触れるたび
ゆるやかに解(ほど)ける 刹那の花
千の宵 千の欲望(ユメ)
降り積む過去(とき)のはざま
記憶の底繰り返す銀塩写真(フォトグラフィカ)
千の夜 千の翳
馨る闇は陽炎(かげろう)
迷ひ路(じ)の天(そら)に灯す星の燭(あかり)
日暮れの空 きらり ひとつぶ
星の欠片(かけら)が 瞬く
降りる宵闇の裾 頬に触れるたび
ひそやかに零れる 吐息の花
千の宵 千の幻想(ユメ)
儚い時代(とき)の波間
耳の底で繰り返す蓄音機(フォノグラフィア)
千の歌 千の風
浮かぶ月は十六夜(いざよい)
通ひ路の雲間照らす燭(しょく)の灯り
凍てる胸の薄氷(はくひょう) ひとつ触れるたび
秘めやかに彩づく 久遠の花
千の宵 千の夢
綾なす運命(とき)のはざま
眸の底繰り返す残像絵(ソォマトロォプ)
天に星 地には華
人の夢は泡沫
忘れじの俤(かげ)に結ぶ星の標
天に高く きらめく北極星(ナヴィガートリア)
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桜散ル夜~ハナチルヤ~ – みとせのりこ 花匂う刹那一夜を限り この夢に酔い痴れ春の世を謳歌(うた)え月は果敢なく 夜天(そら)を翔けて過ぎゆく時代(とき)は徒(いたづ)らに栄華と闇夜の間(はざかい)に
Centifolia – みとせのりこ 蒼い月が繊(ほそ)い光(かげ)を落とす凍てる夜の底朽ちて欠けた白い壁にのびる蔓草の左巻きのかすかな螺子が置き去られた睡みの時間(とき)を捲きとりわたしの魂(ここ
片羽(カタハ)のコトリ – みとせのりこ 自覚と自戒の狭間に浮かぶこの世は涯てない無間の火宅意識と儀式の波間に潜むこの身は厭かない無辺の孤独夜の底に灯る火は誘蛾灯指先も見えはしない本能も衝動も全ては格子
音のないウタ – みとせのりこ 凍てつく薄氷(うすらい)の 窓の中かすかに映る 幻影(かげ)ひとつ 罅割れて軋む歯車が刻む記憶抜けない棘 消えない声 凍る痛み見上げた空指をすり抜けてゆく 幾千
神様のいないクリスマス – みとせのりこ キャンドルのあかりが まちじゅうをてらしてきょうだけはせかいも いのりにみちてるきらめくきんとぎんのひかりつくりものの おほしさまむかし ママがいってたことかみ
STIGMATA – みとせのりこ 閉じかけた瞳に 偽りを映して絡み合う運命は 過ちに灼かれて目を伏せ祈りを捧げる 深く蒼き闇の中で跪く者の握り締めた手に 刻まれた聖痕のように禍神の凍てつく瞳よ
白と黒の祭儀 – みとせのりこ 夜に浮かんだ 上弦の月欠けてゆらり零れる 紅玉石の色の雫足音ひとつたてずに通り過ぎるしなやかな闇 纏う 猫たちの影細い祭儀の詞混沌の淵 解き放つ名前それは刻まれ
宵待ロマンチカ – みとせのりこ 戀せよ乙女戀せよ乙女 花の生命は 短きものと嘯(うそぶ)いて戀せよ乙女 花の色は 移りにけりな徒(いたづ)らに貴方の聲を聴けば 夢でも一目逢いたくて千々に乱れる
君知ル哉、此ノ華 – みとせのりこ 煉瓦の舗道(みち)に黄昏色(セピア)の翳落ちたならば瓦斯燈の火が きらり 夜に灯る光も翳も希望も 綯い交ぜの街片隅に咲く 君よ知るや この花の色胸秘めし この花
天球トロイメライ – みとせのりこ 黄昏に 凍てる藍(あお)が滲む 天(そら)の汀(みぎわ)降りてくる 宵の垂帳散りばめた玻璃玉(びいどろ)言葉は星を 繋ぐように曖昧な像(かたち)を みせてもこの
小さな庭 – みとせのりこ わたしが この人を近いとき亡(うしな)うと知った日空は青く 緑は風にきらめいていたわたしのこころは さざなみに覆われ揺られているのに世界はただ澄み渡り 小さな庭
朧月夜 – みとせのりこ 菜の花畠に 入り日薄れ見わたす山の端 霞ふかし春風そよふく空を見れば夕月かかりて におい淡し里わの火影も 森の色も田中の小路を たどる人も蛙のなくねも かねの音